誤解しやすい犬のボディランゲージ

犬は言葉は話せませんが、目、耳、しっぽなど全身を使って、喜びや不安、警戒などたくさんの気もちを表現しています。犬の気もちを理解するには、ボディランゲージを読みとることが大切です。

しかし、犬がボディランゲージで表している気もちと飼い主が受け取る気もちが、少しすれ違うことがあります。人が「喜んでいる」と思ったり、逆に「飼い主をバカにしている」と感じるサインが、実は、犬は飼い主に「不安」や「その行為をやめてほしい」と伝えていることもあります。ここでは、誤解されやすいボディランゲージとその意味について解説していきます。

混乱・ストレスサイン

犬は、混乱したり、その場の状況にストレスを感じているときに、こんな行動をします。飼い主をバカにしたり、反抗しているわけではありません。

あくび

よくある勘違い「飽きたの?」「眠いの?」「バカにしているの?」
犬の気もち「ちょっと落ち着いて」「緊張するなぁ」「不安だな」「眠いんじゃないよ」

鼻をなめる、舌なめずりをする、口をくちゃくちゃさせる

よくある勘違い「お腹が空いたの?」
犬の気もち「落ち着かないな」「緊張するなぁ」「ちょっとイヤかも」

顔をそむける

よくある勘違い「無視するの?」「反抗しているの?」
犬の気もち「それちょっとイヤです」「どうしたらいいんだろう」「かまわないで」

目を細める・まばたきする

よくある勘違い「まぶしいの?」「ねむいの?」「目にゴミが入ったの?」
犬の気もち「居心地悪いなぁ」「それちょっとヤメテ」「まぶしいんじゃないよ」

視線をはずす

よくある勘違い「無視するの?」「バカにしているの?」「反抗的な態度をとっているの?」
犬の気もち「居心地悪いよ」「ヤメテ」「バカにしてるんじゃないよ」「無視してるんじゃないよ」

地面の臭いをかぐ 地面をひっかく

よくある勘違い「無視するの?」「なにかあるの?」
犬の気もち「ほっといて」「関係ないよ」「地面を堀りたいわけじゃないよ」

体をかく

よくある勘違い「かゆいの?」
犬の気もち「不安だな」「緊張するなぁ」「かゆいわけじゃないよ」

ブルブルする

よくある勘違い「体に何かついたの?」「濡れたの?」
犬の気もち「もうかまわないでね」「気分転換」「やれやれもうおしまいにして」


犬の目を見つめたり、犬を抱きしめたときに、これらの行動をしたら、犬は居心地の悪さや緊張や不安を感じているのかもしれません。
他人に会ったときに、犬が「舌なめずり」をしたり「口をくちゃくちゃ」させて不安のサインを出しているのに、飼い主が気づいてあげていないことがよくみられます。このような犬に手を出すと咬まれてしまう事故につながりかねませんから、不安やストレスサインを出している犬を他人に近づけるのはNGです。
また、他の犬と出会ったときに地面のにおいをかいだり、体をかいたりしたら、犬は「どうしたらいいかわからない」、「どう挨拶したらいいのかわからない」、「できればかかわりたくない」の気もちで、相手には「敵ではないから落ち着いて」と伝えています。無理に近づけたり挨拶させたりするのはNGです。

かなりストレスを感じているサイン

犬は、混乱したり、その場の状況にストレスを感じているときに、こんな行動をします。

白目をむいて見る

よくある勘違い「にらんでるの?」「怒ってるの?」
犬の気もち「どうしていいかわからない」「困ってる」「逃げたいな」

例えば、ケージのすみでじっとして白目でこちらを見ていたら、こっちに来ないで、もっと離れて、というサインです。

うずくまる

犬の気もち「怖いからかまわないで」「いないことにして」

体を丸めてうずくまるのは、とても怖い、悲しいというサインです。耳は後ろに倒し、しっぽは股の間にはさみます。とてもストレスを感じている状態です。

おなかをみせる

犬がおなかを見せるのはこれまでよく「服従のサイン」と言われてきました。「おなかをなでて」というサイン、つまり人におなかをなでろと要求しているサインだという人もいます。なんだか矛盾しているようにも感じます。
実は、犬が寝転んで おなかを見せるのは、たいていの場合は「おなかをなでて」ではありません。また、いわゆる「あなたがボスです=服従」とも少し違います。

横向きに寝転んでおなかを見せる

犬の気もち「不安」「どうしいいかわからない」「いじめないで」「いじわるしないで」「抵抗しません」

例えば、いたずらして叱っているときに横向きでおなかを見せたら、怒っている飼い主に対して、「抵抗する気はないので落ち着いて」というサインです。
服従の意味ではないので、おなかを見せるまで叱らないと飼い主をバカにするということはありません。
また、強引にひっくり返しておなかを出させることで服従させる方法も、無理やり犬の急所を出させているだけなので、犬に恐怖を与え、信頼を得ることはできません。

人のそばにくっついてきておなかを見せる

犬の気もち「そばにいたいの」「おなかをなでてほしいわけじゃないよ」

おなかをなでてもらうのが大好きな犬の場合は「おなかなでて」のサインのこともありますが、多くの犬はただ飼い主のそばで安心してくつろいでいたいだけで、おなかをなでてほしいわけではありません。

しっぽをふる

犬がしっぽをふっていると「喜んでいる」と思う人がいますが、犬がしっぽをふるのは「喜んでいる」ときだけではありません。
怒っているときも、パニックになっているときも、不安を感じているときも、しっぽをふります。
犬の気もちを理解するには、しっぽだけでなく体全体を見ましょう。

力が抜けてゆるやかにしっぽをふる

犬の気もち「リラックス」

体全体から力が抜けて緊張感がありません。柴犬のようにふだんからしっぽが上がっている犬は高い位置で、ふだんからしっぽが下がっている犬は下がった位置で、やさしくふります。

しっぽを上げて固く振る

犬の気もち「近づくな」「闘うぞ」「緊張」

体の重心は前のめりになり、対象となるものをしっかり見て、口を小さく硬く閉じ、しっぽを高く上げて 速く固くふります。体も表情も緊張しています。
「しっぽをふっているから喜んでいる、大丈夫」と誤解して、手を出して咬まれる事故がよく起きるシチュエーションです。

しっぽを下げて小刻みに振る

犬の気もち「不安」「怖い」「それ以上近づかないで」

不安や恐怖が高まるほど、しっぽは下がって股の間に挟まれていきます。体の重心は後ろに移り、顔も緊張した表情になります。
この場合も、「しっぽをふっているから喜んでいる、大丈夫」と誤解して近づいたり手を出してしまい、恐怖から犬が咬んでしまう事故が起きることがあります。

しっぽを上げてお尻ごと振る

犬の気もち「うれしい」「楽しい」

喜んでいるときは、体の力が抜けてお尻ごとしっぽを振ります。表情も緊張がありません。

「笑顔」に見えてもハッピーではないサイン

口角が上がっている顔は人では笑顔ですが、犬では違うことがあります。

ハッピーではない「笑顔」

犬の気もち「困った」「不安」「いじわるしないで」

犬の口が広がり口角が上がっているときは、不安や居心地の悪さを感じています。
ベロはヘラのように広がったかたちになります。

例えば、動物病院の待合室で、犬が口を開けてベロを出してハアハアしていると、暑いのかなと思いますが、不安や緊張を伝えているのです。
ドッグランやドッグカフェでも、笑顔のように見えて、犬も楽しいんだと誤解されることがあります。

幸せなサイン

犬が幸せを感じているときは、顔全体がリラックスしています。

まとめ

ここで紹介したのはほんの一部です。犬は目、耳、尻尾、姿勢など体の全部を使って感情を表していますから、犬のボディランゲージを読み取るときには、必ず、体全体を見てください。

執筆者:事務局