子犬のしつけと社会化

犬と人の関係は「主従関係」ではないので、「犬の上に立つ」必要もないし、「犬のボス」になる必要もありません。

犬と人の関係は「親子関係」に似ているので、よい親、本当の意味でのよいリーダー(安全に正しい方向に導く人)になってください。

犬の訓練やトレーニング施設の選び方

犬も、一緒に訓練に参加する人も、楽しく参加できる犬の学校がお勧めです。

犬のしつけや訓練を行う方々は、人でいう「学校の先生」と同じ役割と考えていただけたらよいかと思います。犬に新しい技を教えたり、お行儀良くするために、「おすわり」などの言葉を教えていく人です。またお散歩の仕方なども教えてくれます。

教え方にはいろいろな方法があると思いますが、人と同様、暴力を使って教えていくのはあまり歓迎できません。犬の場合、残念ながらまだ体罰を使った方法が少なからず使われています。

例えば、チョークチェーンと言って鎖状の首輪で犬の首を絞めて痛みを与えながら教える方法、Eカラーと言って電気が通る首輪を使って電気でビリッと痛みを与えて教える方法、缶に小銭や石など入れて大きな音を犬のそばでたてて驚かせて行動を制止する方法、小銭の入った袋を犬のそばに投げつける方法、棒でたたく方法、大きな声で怒鳴る方法など、犬は恐怖を覚えながら学習をしていくことになります。

この方法は、犬に精神的負担を与え、人との関係も悪くなってしまいますので、体罰を用いる方法を推奨する施設は避けたほうがいいでしょう。

預かりの施設の場合も訓練の最中に影からでも様子を見に行ってはいけない施設や、練習を見学させていただけない施設は「注意信号」です。通常犬の訓練やトレーニングは理論に従って行っているものなので、ご家族に見せられないということはないと思います。もし見せていただけないのであれば、その学校に愛犬を本当に行かせていいのか、よく考えてください。

犬のしつけ方 よい「親」「リーダー」になるために

絶対に、何があっても「体罰」は使わないこと。怒鳴る、大声で脅かす、大きな音を立てるのも精神的な体罰です。

「ダメな行動をやめさせる」のではなく、やってはいけない行動の代わりに「よい・やってほしい行動を教える」ことをします。いつよい行動をしたらいいのかを犬に教えることが重要です。

「やってほしくない行動」を止めるには「やめなさい」など声をかけて行動を中断し、すぐに本来行ってほしい行動が何か(例えばおすわり)を犬に伝え、犬が座ったら報酬を与えます。

例:人の食事中に食卓に来て食べ物をねだることをやめさせたいときのしつけ方

 

食卓に前足をかける行動を「あれ?」とか「だめよ」と言ってその行動を中断する。

犬のベッドの上に犬をおやつを使って誘導する。ベッドでおやつを与える。

さらにベッドの上で長時間遊べるように犬のベッドの上でおいしいガムをかませたり、エサが出てくる「知育トイ」を与える。

⇒人の食事をねだる行動ではなく、寝床の上で一人で楽しく遊べる行動を教えてあげると、食事時間になると自ら寝床に行って、おもちゃやガムをねだるようになっていきます。

犬の社会化について

子犬には、その犬の暮らす環境や生涯接触する人や動物などに対してなれていく時期があります。この時期のことを「社会化期」と言います。犬の場合生後3週齢から16週齢の時期が社会化期に当たります。この時期の子犬たちは様々な情報をストレスなく吸収していきます。もしこの時期に接することのなかった新奇な刺激に対しては、子犬は強く警戒する場合があります。

例えば、ひげを生やした男性に4か月齢までにあわないと、ひげの生えた男性を怖がってしまうことがあります。そのため子犬を迎えたら、4か月までの間に、家庭内にある物(掃除機、自転車、台所用品、楽器など)、家庭内の音、いろいろな洋服の人(夏服、冬服、帽子、手袋、作業用つなぎ、ヘルメットなど)、杖をつく人、車いすの人、など今後出会うかもしれない刺激にどんどん接触いただきたいと思います。この時、おやつを使いながら、楽しく新規刺激に接触します。この社会化の新規刺激への暴露は子犬におやつをあげながらゆっくり行いましょう。

子犬のしかり方

子犬のしつけに関して、「厳しくしかる」必要はありません。人が「犬の上に立つ」必要もありません。子犬には誤食やいたずらをさせないような環境を作り、人が何をしてほしいか教えていきます。

例えば、自宅のテレビのリモコンをかじってしまう行動があった場合、子犬にとってはリモコンもおもちゃと思っていますから、リモコンをかじったことを叱ってもなぜ叱られているのか理解できません。何度も同じことをやって、何度も叱られているうちに、人との関係性が壊れたり、人のことを怖がったり、人の手が口元に行くのを拒んで攻撃的になったりします。もしリモコンをいたずらされたくなかったら、リモコンを子犬の口が届かないところに置いておくようにします。もし子犬が壁紙をかじってはがしているのであれば、退屈しているだけですので、子犬の様子を見ていられないときは、いたずらできないように子犬をケージやサークルに入れておいて、子犬が遊んでいいかじれるおもちゃを渡しておきます。子犬を部屋で自由にさせるときは、必ず子犬を見ているようにしていたずらをさせないようにしましょう。

子犬は叱ったり、体罰を与えると、人に対して恐怖感を持つようになったり、人の手に対して恐怖感を持つようになってしまいます。子犬は絶対に叱らないでください。そしていたずらができないように子犬の行動を管理し、子犬にとっての正しい安全な遊びを教えるようにしましょう。

 

執筆者:事務局