乳のみ子猫のケア

子猫は生後5-6週齢で離乳しますので、ここでは0日齢から離乳するまでの子猫のケアについてご紹介します。

1.温める

用意するもの

  • 寝床(猫ベッド、段ボール箱など)
  • ヒーター(電気式マット、湯たんぽなど)
  • タオル
  • 温度計/湿度計
  • 加湿器

寝床(猫ベッド、段ボール箱など)

乳のみ子猫のいる部屋の室温は24-28℃程度に設定し、部屋が乾燥しすぎないように湿度は50-60%を目安にしましょう。加湿器は湯沸かしタイプを使用すると、部屋全体がホンワカと温まります。

子猫の寝る場所はサークルで囲うか、ケージを用意し、その中に猫ベッドや小さな段ボール箱などを置いてタオルを敷きましょう。

タオルの下にヒーターを置きます。子猫がタオルの下に潜っても直接ヒーターに触れないように注意します。

寝床でおしっこを漏らしてしまうこともあるので、子猫の身体が濡れないようにペットシーツなどをタオルの下に敷くのも良いでしょう。

子猫の眠る所は薄暗くなるようにタオルなどで覆うようにしますが、陽の光を感じられるような部屋が良いでしょう。

ヒーター

哺乳期の子猫はおとなの猫よりも体温が少し低いため、ヒーターなどで暖かくしてあげましょう。電気式マットは温度設定ができるものを選びましょう。

子猫が兄弟姉妹など複数の場合は抱き合って寝ますので、22-26℃前後を目安にすると良いでしょう。子猫が1頭しかいない場合は24-28℃前後、子猫の体調があまり良くない場合は30-34℃程度になるようにします。

電気式マットがすぐに用意できない場合は、ペットボトルにお湯を入れて簡易の湯たんぽとし、タオルなどで包んで子猫が火傷しないように気をつけましょう。

 

2.哺乳する

用意するもの

  • 猫用ミルク
  • 猫用哺乳瓶
  • 猫用乳首
  • 電気ポット
  • 哺乳瓶洗浄

猫用ミルク

ママ猫がいない、あるいはママ猫が育てないなど、ママ猫の母乳が飲めない時には,猫専用の人工の猫用ミルクで育てましょう。粉や液体の猫用ミルクが市販されていますので飲みやすいものを選びましょう。

牛乳や山羊(ヤギ)乳を乳のみ子猫に与えると下痢の原因になることがありますので、あげないようにしましょう。

拾ったり保護したりして急に猫用ミルクが必要になった時には、近所のコンビニエンスストアなどで探してみましょう。筆者が調査したほとんどのコンビニでは猫用ミルクを販売していましたので、普段から気をつけてみておきましょう。

ミルクを作る

粉ミルクには水でも溶けるものがありますが、できるだけ70℃以上のお湯でミルクを作るようにしましょう。人でまれに、これ以下の温度では食中毒を起こすことが知られています。猫での報告はありませんが、注意することに越したことはありません。

乳のみ子猫にミルクを与える前に、必ず自分の腕や手の甲にミルクを2-3滴つけて、熱くないかどうか確認しましょう。お腹の空いてる子猫は熱いミルクでも頑張って飲んでしまうことがあり、口の中や食道を火傷してしまいます。

哺乳するミルクの適温は35-38℃と言われていますので、人肌程度の温度が理想です。猫ちゃんによって熱いミルクが好きな子、少し冷めたのが好きな子、メーカーの好き嫌い、などありますので、その子にあったミルクを探しましょう。

ミルクを飲ませる

猫用哺乳瓶を使ってミルクを飲ませるようにしましょう。ほとんどの猫用哺乳瓶の乳首には穴が開いていませんので、乳首の先端に針で穴を開けるか、カッターなどで切れ込みを入れます。乳首に穴を開けたら、哺乳瓶につけて逆さまにした時、自然にポタッ、ポタッと垂れるのを確認しましょう。

乳のみ子猫をタオルなどの上に腹這いにさせて、少し顔を上げます。唇に乳首が当たると反射で探すような仕草をします。乳首をそっと子猫の顔の正面から差し出すと乳首を咥えます。咥えたら乳首を吸いますので、子猫の頭を支え、哺乳瓶をしっかりと保持してミルクを飲み終わるのを待ちます。

ミルクをしっかり飲めている時は、耳が前後にパタパタと動きます。健康な乳のみ子猫は、体重100グラムあたり4-5ml程度のミルクを飲むことができますので目安にしましょう。乳首の穴が大き過ぎると鼻からミルクが溢れることがあります。成長に伴い乳首の穴を大きくする必要がありますが、子猫があまり飲めない時や体重が毎日増えない時は動物病院に相談するようにしましょう。

哺乳瓶で飲めない時、シリンジポンプを使うことがありますが、誤嚥させてしまう事故が多いので注意しましょう。

ミルクを飲む子猫

ミルクを飲む子猫

3.オシッコとウンチ

オシッコ

タイミング

ミルクを飲むときに排尿させます。ミルクを飲ませる前か、飲んだ後かはその子によって違います。ミルクの合間にしてほしい子もいますので、その子にあった排尿のタイミングにします。

オシッコをさせる

子猫を手のひらの上で腹這いにさせ、お湯で濡らしたガーゼなどで陰部を刺激します。ゴシゴシ擦るのではなく小刻みにトントンします。最初はイヤイヤしますが、オシッコをしたくなるとじっとして動かなくなり、排尿直前には尻尾が小刻みに震えます。そのままトントンするとオシッコが排泄されます。

排尿が終わるとモゾモゾ動き始めますので、お湯で濡らしたガーゼを新しく用意して、皮膚についた オシッコを拭き取ります。オシッコが皮膚についたままにすると皮膚がかぶれて炎症を起こしやすくなるので、丁寧に拭き取るようにしましょう。

ウンチ

哺乳期にはほとんどウンチをしません。通常は排尿時に自然にウンチが出てくるようになりますが、離乳食を始めるまで数回程度するだけの子猫も多くいます。便秘症と勘違いして浣腸したり綿棒をお尻に入れたりするのは絶対にやめましょう。ただし、離乳食を始めたら毎日排便するのが普通ですので、離乳して1週間経っても排便しない時は動物病院に相談しましょう。

トイレ

生後3週齢以降になると自力で排尿できるようになるので、寝床の横にトイレを置くようにしましょう。生後3週齢では歩様がヨチヨチでトイレをまたぐことはできません。最初はペットシーツを敷いておくだけにし、トイレをする場所を覚えたら、子猫がまたげるくらいの高さの浅いトレーなどにペットシーツを敷いて少しの猫砂を入れておきます。最初はあちこちで排尿しますが、少しずつ失敗しなくなるようになります。

 

執筆者:太刀川史郎

獣医師

略歴:北里大学大学院卒業、獣医学修士を取得。
たちかわ動物病院院長、日本獣医皮膚科学会認定医、日本臨床獣医学フォーラム幹事。
病気の子猫を保護して治療後に新しいお家に譲渡する活動をしている。