段階に応じたサポートと介護予防

猫は自立心が強く、人の手を借りることを好みません。高齢猫のサポートの基本は、自立した生活を維持させることです。

行動や見た目の変化が分かりにくく、身体機能の低下にも気づきにくいですが、早期の対策は愛猫の生活の質を守ります。介護予防は日常ケアの延長です。体の変化や行動の変化に気づいたら対策を始めましょう。

高齢猫でよく見られる変化をチェック

まず、高齢猫でよく見られる変化をチェックして病気の可能性を除外しましょう。

  • 体重が減った
  • 口臭が出てきた
  • 目ヤニが増えた
  • 毛のツヤがなくなってきた。パサつきやすくなった
  • 歯に黄ばみがある、茶色っぽくなってきた
  • お尻が小さくなった
  • お腹がたるんできた
  • 爪がよく伸びるようになった
  • 食べ物の好みが変わった
  • イライラしていることが増えた
  • 顔を洗ったり、毛づくろいが減った

上記の変化があり、動物病院で原因が病気である可能性が除外されたら、それは加齢に伴う変化です。

介護段階に応じたサポート

介護段階に応じた必要なサポートを見ていきましょう。

(介護度分類は独自にまとめたものです)

 生活動作 飲食 トイレ

起き上がり
立ち上がり

要支援前期 高い所へ飛び乗る飛び降りることが減る 風味・硬さ・大きさなど好みの変化 問題なし 問題なし
要支援後期 高い所への上り下りが減る
イライラしたり落ち込むような時がある
 

 

時々失敗する 問題なし
要介護前期 動きがゆっくりになる
爪が引っかかることがよくある
手足を伸ばして横臥する
続けて食事をしない
食事の姿勢を長く保てない
トイレの外に排泄することが増える 起き上がりや立ち上がりに時間がかかる
要介護後期 移動することに努力が必要 飲食に努力が必要 トイレまで行くことに努力が必要 姿勢を維持することが困難

要支援前期

要支援の開始は、活動量低下を防ぐことです。

筋力の衰えでジャンプの高さが低くなっていきます。

猫は失敗を避けます。失敗しないように行動を縮小すれば、活動量が減ってしまいます。

楽にジャンプができるように段差を減らしたり、着地面を衝撃吸収できるようにするなど環境を整備しましょう。

要支援後期

生活動作に不自由を感じ始める時期です。ストレスの大きさは個々に違いますが、日常生活で緊張することが増え、体も心も硬くこわばっていきます。生活の中の緊張をゼロにすることはできませんが、ご家族に気づいてもらえることが不安をやわらげます。見守りながら、猫が活動しやすい環境の整備を続け、できないことを増やさないようにします。

自分で伸びをすることが減ってきます。ストレッチも手伝ってあげられると、心地よい体が保てます。全身を触れるようにしておきましょう。

食べられるフードも、バリエーションを増やしておきましょう。好物をいくつか見つけておけると、体調を崩した時に役立ちます。

要介護前期

筋力の低下など、運動能力の衰えで、立ち座りや段差を乗り越えることに支障が出てきます。

寝具は柔らかすぎると起き上がりにくくなります。トイレの段差を越えられず、トイレの外側に排泄することが出てきます。

寝具は底つきせず、体が沈み込まない硬さのあるものにします。トイレは縁の低いものにしましょう。

食事や水飲みの場所とトイレは行きやすいことも大切ですが、動けるうちはできるだけ離して配置しましょう。

爪の手入れが減ってくると、爪が肉球に刺さってしまったり、爪の伸びすぎで歩きにくくなります。グルーミングが減ってくるのは、体の硬さが原因となっていることもあります。目や口の周りの清拭やブラッシング、爪切りなどをしてあげましょう。

食事や水は摂りやすい高さに配置します。

猫は水分摂取が苦手です。ウェットフードを増やし、食事からとれる量を増やしたり、水飲み場所を増やして、飲水量を増やす工夫をしましょう。

要介護後期

生活全般に介助が必要になってきます。生活の空間を制限してあげたほうが、安心できます。

ベッドの下やクローゼットの奥に隠れてしまわないように、サークルやケージなどで安心できる安全な場所を用意してあげましょう。

体温調節が苦手になってきます。自由に動くことができなくなると、自力で暑さ寒さから逃れることができなくなります。感覚も鈍くなるので、冷えすぎや熱くなりすぎに気づきにくいこともあります。屋内の温度湿度を調整することと同時に、洋服や腹巻など着衣に慣れさせておきましょう。嫌がる場合は、肌掛けを一枚かけて自分の体温で調節できるようにしてあげましょう。体温の管理は、できるだけこまめに体に触れて確認しましょう。

脱水があることが多く、体内の温度がまだらで末端は血行不良で冷えます。脱水は体のすべての機能に影響します。口から十分な水分が取れない場合は、かかりつけの獣医師と相談しましょう。

目の周り、口の周りの清拭や全身のブラッシングは、きれいずきの猫にとって心地よいはずです。マッサージ効果もあり血行が良くなります。お母さん猫のように、やさしくグルーミングをしてあげましょう。

筋力低下で見られる姿勢1

 

筋力低下で見られる姿勢2

 

 

執筆者:松本晃子
獣医師
ペットホームケアえるそる:犬猫訪問鍼灸・介護リハビリ 訪問獣医師
ペットケアサービスLet’s(高齢犬デイケアサービス&犬の幼稚園):デイケア担当 非常勤
赤坂動物病院:シニアケア担当 非常勤
日本獣医生命科学大学卒、獣医中医師・獣医推拿整体師、
獣医保健ソーシャルワーカー®、横浜市動物適正飼育推進員