目次
室内で犬を飼う場合には、犬が安全で快適に過ごせる工夫が最も大切です。
室内には、人にとっては日常的なものでも、犬には危険なものが意外と多くあります。
犬にとっては当たり前の行動でも、室内でされると困ることもあるので、しつけも必要になってきます。
①犬が安心快適に過ごせる定位置を用意する
必要なグッズ ケージ、ベッド、サークル、飲み水
ケージやベッドは犬が安心して休む場所です。
家族がいる居間などで落ち着ける場所を選び、ベッドにはやわらかい敷物をしいて、暖かく快適にしましょう。家の中に何か所かベッドを置いて、気温や日照、犬の気分によって選べるようにしてあげると、より快適になります。
ケージの中も、暖かくやわらかな敷物をしいて、快適な場所にしましょう。
トイレがうまくできるようになるまでや、人が目を離しているときなどのために、サークルも用意しましょう。サークルの中には、犬がゆっくり休める暖かく快適な場所、トイレ、飲み水を用意します。
重要なのは、ケージやサークルは犬を閉じ込めておく場所ではないということです。いたずらの罰や叱るためにケージやサークルを使用してはいけません。犬がケージの中にいるときに、ケージを叩いたり、揺らしたり、大きな音をたてて驚かすようなことをしてはいけません。ケージの中は、安心・安全で、快適に休めるところだと犬が思うようにすることが大切です。
犬が喜んでケージに入るようにするトレーニングは ケージに入る(ハウスの教え方) を読んでください。
②トイレのトレーニング
必要なグッズ トイレトレイ、ペットシート、サークル
室内飼育では、トイレのトレーニングがとても大切です。
トイレトレーニングは犬が家に来た当日から始まります。犬がトイレを失敗しても、絶対に叱ってはいけません。
具体的な教え方は、 子犬のトイレの教え方 成犬(保護犬)のトイレの教え方 を読んでください。
オス犬は、大人になると、おしっこをかけるマーキングが始まります。去勢していないオス犬のマーキングは、性的なコミュニケーション行動であることがほとんどなので、去勢手術で抑えることができます。
メス犬や去勢したオス犬が、室内に頻繁におしっこをする場合は、ストレスによるマーキング行動か、泌尿器の病気であることが考えられるので、飼育環境にストレスになるようなものはないか、飼い主との関係は良好かを見直したり、体に病気がないか動物病院に相談するようにしましょう。
③犬が滑らないように工夫する
必要なグッズ 滑り防止のマット
床がフローリングの場合は犬の足が滑りやすいので、滑らないマットなどを敷いてあげるといいでしょう。
床が滑ると四肢や背骨に負担をかけ、骨折(特にトイプードルのような足の細い犬種は注意)や椎間板ヘルニア(特にダックスフントのような足の短い犬種は注意)など、思わぬケガや病気の原因になることがあります。ケガをしないまでも、滑る床で足腰に負担をかけていると、若いころは平気でも、高齢になってから様々な不調が現れやすくなります。
滑り防止のマットには、ペット用に開発された消臭機能付きのものや、汚れても部分的に洗える用に小さいマットを組み合わせるなどの様々なタイプが市販されています。マンションなど集合住宅の場合は、防音機能つきものを選ぶのもいいでしょう。
④犬にいたずらされて困るものや危険なものは置かない
注意するものの例 コンセント、電気コード、ティッシュ、リモコン、本、新聞・雑誌、薬・薬品、タバコ、観葉植物
人の生活空間には、犬にとって危険なものがたくさんあります。犬にいたずらされて困るものや危険なものは、犬の届く範囲に置かないようにしましょう。
・コンセントや電気コード
コンセントや電気コードは犬がかじると感電の恐れがあります。必要のない電気コードは片づけ、必要なコードは犬が届かないところに設置したり、カバーをつけてガードしましょう。コンセントはコンセントカバーをつけると安心です。コンセントカバーは様々なタイプが市販されています。
・ティッシュやリモコンなどの小物
ティッシュやリモコンなどの室内小物は、犬にとってはおもちゃです。本や新聞、雑誌なども、破ける楽しいおもちゃになります。いたずらされて困るものは、犬の届かない場所や収納にしまうようにしましょう。もしいたずらされても犬が悪いの
ではなく、犬の届くところに放置していた人の責任です。いたずらした犬を叱ってやめさせるのではなく、最初からいたずらできないようにしておくことが必要です。
・薬、タバコ、殺虫剤、洗剤
薬は犬の届くところに放置せず、必ず引き出しや扉のついた棚の中にしまってください。飼い主が薬を服用しているところを見ている犬は、薬をおいしい食べ物だと思っています。犬が薬を食べてしまうと命にかかわるので、必ず厳重に管理してください。犬の命にかかわる誤飲事故では、薬が原因のケースがとても多いです。タバコや殺虫剤、洗剤も同様です。
・人の食べ物
人の食べ物も、玉ねぎなど種類によっては犬にとって毒になります。台所には食材を放置せず、ゲートや柵などを用いて、犬が台所に入れないようにしましょう。お菓子類にも、チョコレートや甘味料のキシリトールのように、犬には毒性があるものを使っていることがあるので、注意してください。人の食べものは基本的に犬に与えない、犬がいたずらできるところに置かないのが原則です。
・観葉植物、切り花
観葉植物や鉢植え、切り花のなかにも、食べると毒になるものがあります。切り花の水に植物の毒が溶け出していて、水をなめた犬が中毒を起こすことがあります。ペットがいる室内には置かないほうが無難です。
・その他 電池など
そのほかにも、電池など一般に子供の誤飲事故になりやすいものは、犬でも危険なので注意しましょう。
犬がもし危険なものや困るものをくわえてしまったとき、慌てて取り上げようとしないでください。飼い主が慌てて取り上げようとすると、取られないように飲み込んでしまったり、犬にとって楽しい取り合いっこゲームになってしまうことがあります。対応の方法については、ちょうだいの教え方 を読んでください。
⑤家具や壁に保護シートを貼る
必要なグッズ 保護シート
犬の爪で家具や壁が傷つく場合は、保護シートを貼るのもいいでしょう。賃貸でもペット可の物件が増えてきましたが、退去時には原状回復しなくてはならないので、あらかじめ傷つけないように対策をとっておくほうがいいかもしれません。
犬が家具などをかじってしまう場合は、かじるおもちゃが不足していたり、かじることで飼い主の注意を引くように学習してしまっているなど原因があります。ただ叱ってかじるのをやめさせるのではなく、原因を探ってそれに対処することが必要になります。
⑥留守番がストレスにならないように工夫する
室内飼いだと、外飼いに比べて飼い主と一緒にいる時間が長くなる分、ひとりでいるお留守番にストレスを感じやすくなります。
子犬や、家に来てまだ日が浅い場合、トイレの失敗やいたずらが心配な場合などは、部屋にフリーにせずに、サークルの中でお留守番させましょう。
犬は人のように一気に数時間眠るのではなく、一日のうちに何度も浅い眠りと覚醒を繰り返します。安心快適な場所であれば、慣れてくれば留守番の間、うとうとと寝て過ごすこともあります。
しかし、いきなり長時間ひとりにされるのは、犬にとってストレスです。急に長時間の留守番をさせるのではなく、ひとりでいる時間を少しずつ長くして、ストレスを感じないようにトレーニングをすることをおすすめします。
犬をお留守番させるときは、ひとりでいる時間がストレスにならないように環境を整えてあげましょう。
- くつろげるベッド
- きれいなトイレ
- たっぷりの飲み水(こぼした時に備え、複数用意します。)
- 留守中に時間をつぶせる楽しいおもちゃ(フードを詰めたおもちゃなど)
時間をつぶす楽しいおもちゃの作り方は、犬のおもちゃ を参考にしてください。
⑦室内飼育で特に大切になるしつけ
・吠えないしつけ
ペット可の物件であっても、吠え声はご近所トラブルになりやすい問題です。よく「無駄吠え」といいますが、犬は無駄に吠えているのではなく、必ず吠える理由や原因があります。ただ叱って吠えるのをやめさせるのでは、うまくいかないばかりか、犬にとってストレスになり、さらに吠えがひどくなることもあります。吠える理由や原因を探って正しく対処してあげましょう。
吠えることへの対処方法は、犬の〈吠える〉をどう止める? を読んでください。吠える理由や原因と、それに対処する方法を具体的に説明しています。
・いろいろなものに慣れさせる(社会化トレーニング)
室内だけだと社会の中のいろいろなものに触れる機会が少なくなりがちです。犬は経験を通じて生涯社会化を続けますが、犬は生後3週令〜14週令までが社会化期と呼ばれる、人や他の犬、他の動物、様々な物などに慣れるのに特に適した時期となります。この社会化期に子犬を室内からあまり出さないでいると、おとなになっても初めて見るものや聞きなれない音に過敏に反応したり、臆病になったりします。子犬のときから少しずつ、楽しみながらいろいろなものに慣らしていくのが大切です。子犬の社会化については、子犬の社会化としつけ を読んでください。
おとなになってからも社会化は続きます。毎日散歩に出かけて、さまざまなものを経験させましょう。
・かまないしつけ
人を咬んでくる犬とは一緒に暮らすことは難しいでしょう。
子犬のうちはあまがみでも、そのままおとなになると咬む力も強くなりますから、子犬のうちに人を咬んではいけないことを教えましょう。詳しくは、子犬のあまがみへの対処 を読んでください。
足を拭こうとすると咬む、犬からものを取ろうとすると咬むなど、犬が人を咬んでいる場合は必ず理由があります。ただ叱ってやめさせようとするのでは、うまくいかないばかりか、さらに咬みつきがひどくなることもあります。咬む理由や原因を探り、原因を作らないことで改善していきましょう。
犬が咬む理由とその対処については、咬む(犬がかむ、どうしたらいい?) を読んでください。
人ではなく、物に対する噛む、かじるなどで困る場合は、かじるおもちゃを与えて犬のかじる欲求を適切に満たしてあげることで解消できます。おもちゃの使い方や作り方については、犬のおもちゃ を読んでください。
・ケージやクレートに入る(クレートトレーニング)
ケージやクレートの中で犬がリラックスしていられるようにしておくと、お留守番のときや来客のとき、犬と一緒の旅行のときなど、様々な場面で、犬がストレスなく過ごすことができます。災害での避難時など緊急の時も、犬の安全を守ることができます。
寝るときにケージやクレートに入るように習慣づけておくといいでしょう。
ケージやクレートに入ることの教え方は、ケージに入る(ハウスの教え方) を読んでください。