犬の避妊と去勢

生まれたばかりの可愛い子犬も、生後約6か月になると性的に成熟(性成熟)します。犬の品種や体格、栄養状態にもよりますが、メスの最初の発情は小型犬では生後6か月前後、大型犬で10か月前後で、1歳になる前にメスは子犬を生めるようになります。

最初の発情のあとは、季節に関係なく6か月~10か月間隔で発情を繰り返します。妊娠すれば1回に数頭以上の子犬を生みます。

オスは生後5か月ころに発情したメスに興味を示し始め、生後7~8か月で交尾可能となります。

子どもを生ませる予定がなければ避妊手術・去勢手術を考えましょう

家庭犬としての犬と暮らす場合、犬が生涯に生むすべての子犬達を飼うことも、幸せに暮らせる新しい飼い主さんを見つけてあげることも、現実には不可能です。

そのためにも、家庭犬にはメスは避妊手術、オスは去勢手術が必要です。

動物は自然のままが良い、健康な体にメスを入れることは可愛そう、というご意見をお持ちの方もいらっしゃいますが、メス犬にとっての自然とは、発情⇒交尾⇒妊娠⇒出産⇒授乳⇒子離れ⇒再び発情、という自然のサイクルを循環することです。これを全て満たしてあげることは出来ません。生涯妊娠・出産を繰り返すことは、メス犬の体に大きな負担をかけます。また、妊娠しないで発情だけを繰り返すことも、犬にとっては非常に不自然な事なのです。

繁殖したいという本能から、交尾相手を求めて家から脱走・放浪したり、様々な場所にラブレター替わりにおしっこをかけたりもします。オスもメスも、交尾相手を探せないストレスでイライラしたり、時にオスは、闘争的になることがあります。これを、トレーニングやしつけでコントロールすることは不可能です。

メリットとデメリット

オス犬は精巣を取る手術、メス犬は一般的に卵巣と子宮を取る手術を行います。

勿論、健康な体にメスを入れるわけですから、デメリットが無いわけではありません。麻酔のリスクはありますし、繁殖関係に使うエネルギー消費がなくなる分、手術後はきちんと食餌管理をしないと太りやすくなります。また、当然繁殖はできなくなります。

メリットとしては、メス犬の場合は望まない妊娠・出産を防げるだけでなく、将来高齢になった時、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍などの病気に罹るリスクを減らします。

オス犬は望まない交尾を防げるほか、繁殖にかかわるストレスが軽減するので穏やかな性格となり飼いやすくなったり、精巣や前立腺などの生殖器に関係する病気のリスクを減らします。

避妊手術・去勢手術には、デメリットを上回る様々なメリットが有ると言えるでしょう。

手術の時期

いつ手術をするかは、その犬の成長具合や栄養状態等によって変わってきますが、性成熟を迎える前がいいでしょう。

オスは、性成熟とともにあちこちにおしっこをかけるマーキング行動や他の犬の上に乗りかかるマウンティング行動などの、人と一緒に暮らすにはちょっと困る行動が現れ始めます。一度行動が始まると手術をしても、行動だけ残ってしまうこともあります。なるべく性成熟前に去勢手術を行うとよいでしょう。

メス犬は最初の発情の前に避妊手術を受けさせるのがいいでしょう。

大人の犬は、いつでも手術を受けさせる事が可能ですが、メス犬の場合は発情期に避妊手術を受けさせることはなるべく避けています。

具体的な時期は、動物病院の獣医師と相談して下さい。

避妊手術・去勢手術によって、繁殖に伴うストレスから解放し、家庭犬として心穏やかな生活を送れるようにすることは、犬にとっても飼い主さんにとってもストレスのない、楽しい暮らし方ではないでしょうか。

 

執筆者:事務局