犬の品種④チワワ

チワワは世界で最も小さい品種の犬とされています。表情豊かなまん丸の目が愛らしく、日本でも人気の小型犬です。片手で抱っこができるサイズは、愛犬と一緒に外出を楽しみたい人にぴったりです。「小さいから飼いやすい」と思われがちですが、かわいい容姿に反して気が強い一面もあるので特徴を知っておきましょう。

品種の由来

チワワの歴史は9世紀ごろのメキシコで栄えたトルテカ文明の時代までさかのぼり、トルテック族が飼い始めたのが由来とされています。トゥーラという都市の遺跡には、チワワによく似ている「テチチ」と呼ばれていた小型犬の像が残っています。

世界最小の犬として知られるようになったのは、19世紀にアメリカ人がメキシコのチワワ州から連れ帰ってブリーディングを始め、20 世紀初頭に品種登録を行なってからのことです。原産地のチワワ州にちなんだ品種名がつけられ、そのかわいらしさで人気者になりました。

チワワの特徴

チワワは世界でもっとも小さい品種で、品種登録団体の犬種標準では体重が3kg以下とされています。表情豊かな大きい目や、アップル・ヘッドと呼ばれるリンゴのように丸い頭が特徴です。被毛は短毛のスムース・コートと長毛のロング・コートの2種類で、ほぼ全ての毛色が認められている珍しい品種でもあります。

小さくて愛らしい容姿ですが他者を警戒したり不安を感じたりしやすい傾向があるので、チワワを迎えるときには外見だけでなく、怖がりな面を持ち、不安を感じて攻撃的になることもある特徴も知っておきましょう。

犬種標準
  • 原産国 メキシコ
  • 体重 1~3kg(理想体重:1.5~2.5kg)
  • 毛種 スムース・コート、ロング・コート
  • 毛色 マール(大理石のような模様)以外のすべての毛色

チワワのしつけ

抱っこに慣らす

身体が小さいので、抱き上げて移動することも多くなります。しかし、不安になりやすい品種なので、頭上や正面から手を伸ばされたり、いきなり触られたりすることに恐怖を感じます。抱かれて持ち上げられることに対し不安にさせないように、抱っこの練習は大切です。正面から覆いかぶさるように抱き上げるのではなく、犬の横から犬の脇の下に片手を入れて自分の体にしっかりと犬の体をつけ、安定させてから抱き上げましょう。空いている片手でごほうびを与えながら抱き上げる練習をするのも良い方法です。

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散歩や外出に慣らす

犬にとって散歩は運動や気分転換だけでなく、精神的な成長にも役立ちます。チワワが散歩や外出を楽しめるように、まずは自宅の近くにあるものを眺めながらごほうびを食べる練習から始めましょう。とはいえ小さなチワワから見れば人間社会は巨大なものばかりで、恐怖を感じるのは当たり前かもしれません。車や人の往来が多い場所などではスリングやキャリーバッグに入れ、静かな公園などで練習をするのも一案です。

チワワに多い病気

前足の骨折

小型犬は椅子やソファから飛び降りた拍子に骨折してしまうことがあります。抱っこしているときや膝に乗せているときに、下へ飛び降りただけで骨折することもあります。とくに1歳未満の活動的な時期には要注意です。

飛び降りたり落ちたりした拍子にキャンと鳴く、足を地面につかずに歩く、触ろうとすると痛がる様子が見られるときは、骨折かもしれません。痛がるところに触れず、なるべく動かさないようにしてすぐに動物病院を受診してください。

僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症は、中高齢の小型犬が発症しやすい心臓病です。心臓の左心室と左心房の間にある弁(僧帽弁)が変形し、心臓がうまく機能できなくなる病気です。

主な症状
  • 運動や興奮したときに喉が詰まったようなせきをする
  • ハアハアと荒い呼吸をする
  • 元気がなくなって動かなくなる

内科的治療では薬を使って症状の進行をある程度抑えられますが、完治させることはできません。一部の動物病院では、完治を目指して僧帽弁を修復して閉じるようにする外科手術が行われています。愛犬が僧帽弁閉鎖不全症を発症したときは、動物病院で治療についてよく相談しましょう。

日常生活で気をつけること

チワワは遊び好きなタイプと、のんびりしているタイプに分かれます。どちらも飼い主の愛情を求めるので、愛犬のタイプに合わせたコミュニケーションを行うことが仲良くなるコツです。たとえば遊び好きならボール投げや引っ張りっこ遊びを、のんびりしているならスキンシップや散策を楽しみましょう。

警戒心が強く怖がりでもあるため、人間の一挙手一投足に反応して吠えたりかんだりすることもあります。これは怖がりのチワワが、不安でどうしたらいいかわからなくなってしまうからです。飼い主がチワワの特徴を理解して怖がらせない接し方を心がけてください。触る前には「触るよ」抱っこする前には「抱っこするよ」など、事前に決まった声かけをするようにしましょう。

 

●参考文献
「はじめてでも失敗しない 愛犬の選び方」(幻冬舎)
「JKC全犬種標準書第12版」(一般社団法人ジャパン ケネル クラブ)
「犬の家庭医学」(幻冬舎)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/yourei/rep07.pdf
一般社団法人ジャパン ケネル クラブ ホームページ

 

執筆者:金子志緒

ライター・編集者。レコード会社と出版社勤務を経てフリーランスになる。主に動物や防災に関する雑誌、書籍、ウェブメディアの制作に携わり、企画から入稿まで担当。愛玩動物飼養管理士1級、防災士、いけばな草月流師範。甲斐犬のサウザーと暮らす。
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