犬の品種⑤ポメラニアン

小さな体をフワフワの被毛に包んだポメラニアンは、華やかな容姿に反して活動的な一面もあります。たとえるならやんちゃな甘えん坊です。しかし警戒心が強く吠えやすい傾向もあるため、しつけが大切な犬種です。ポメラニアンとの暮らし方のポイントをお伝えします。

品種の由来

ポメラニアンの祖先は、ユーラシア大陸の北方でソリを引いていたサモエド(原産国:ロシア)などのスピッツ系の犬が祖先といわれています。ドイツとポーランドにまたがるポメラニア地方で小型化され、地名が品種名になりました。

18世紀のイギリスでビクトリア女王が愛好し、自らドッグショーやブリーディングも熱心に行ったことで注目されるようになりました。19世紀中ごろにはさらに小型化され、現在のポメラニアンに近いサイズになっています。愛らしい容姿やしぐさが注目され、今では世界各国で人気犬種の仲間入りを果たしています。

ポメラニアンの特徴

真っ直ぐ開くように生えるスタンド・オフ・コートの被毛が目を引きます。特に首の周りはまるでたてがみのようにゴージャスです。原産国のドイツでは「トイ・スピッツ」と呼ばれています。スピッツとはドイツ語で「とがっている」という意味で、三角形の耳やマズル(口吻)が特徴です。

ソリ犬をルーツに持っていることもあり、小さくても活発で遊び好きです。一方、のんびりするのが好きなタイプもいます。どちらも飼い主への愛情要求が高いので、愛犬の性格に合わせてコミュニケーションをとりましょう。

犬種標準
  • 原産国 ドイツ
  • 体高 21cm ± 3cm
  • 毛色 ホワイト、ブラック、ブラウン、オレンジ、グレーの色調など

ポメラニアンのしつけ

過剰に吠えさせない対策

警戒したときや興奮したときに吠えやすい傾向があります。特に反応しやすいのはインターホンの音や来客です。周囲に響く甲高い声で「キャンキャン」と吠えるので、集合住宅で暮らしている場合は要注意です。子犬のころからいろいろな物や音に慣れる「社会化トレーニング」を行いましょう。インターホンが鳴ったらとっておきのおやつを与え、音をおいしい食べ物が出る合図に変える方法もあります。

散歩や外出に慣らす

やんちゃなタイプにものんびりしたタイプにも、散歩は心身の成長に欠かせません。いろいろな物事に触れることで、自然に社会化トレーニングを続けられるメリットもあります。ただし、通りすがりの人や犬に吠えることをしつけで完全にやめさせるのは難しいかもしれません。愛犬が反応する相手や物を把握し、吠える前に進行方向を変えたりごほうびを与えながら通り過ぎたりする工夫で対処しましょう。

ポメラニアンに多い病気

気管虚脱

空気の通り道である気管がつぶれて呼吸がしづらくなる小型犬に多い病気です。徐々に悪化し、進行すると呼吸困難に陥ってしまいます。原因は明らかになっていません。

主な症状
  • 喉に何か詰まったような咳やむせるような咳をする
  • 「ゼーゼー」という荒い息をする
  • 「ガーガー」というガチョウの鳴き声のような息をする

初期であれば投薬で咳を抑えて呼吸をしやすくする内科的治療を行います。呼吸に異常がみられたら早めに動物病院に相談しましょう。

アロペシアX(毛周期停止)

毛が生え変わるヘアサイクルが止まり、毛が抜けてしまう病気です。かゆみや痛みがなく、体調に変化がないのが特徴で、ポメラニアンをはじめスピッツ系の若いオスが発症しやすいようです。2〜3歳の若齢犬での発症が多く、ホルモンが関与しているといわれていますが、いまだ解明されておらず、原因は不明です。

主な症状
  • 首周りや太ももの裏側の毛が薄くなる
  • 左右対称に毛が抜ける
  • 毛づやが悪くなり、皮膚や毛が乾燥する
  • かゆみがない

特効薬はなく、さまざま方法を試して犬に合う治療法を探ります。アロペシアXを直接診断する方法はまだありません。かゆみがなく毛が抜ける病気は他にもあるので、まずは動物病院で診てもらいましょう。

日常生活で気をつけること

小さくても元気いっぱいのポメラニアンは、散歩や外出のパートナーになってくれます。家族に対する愛情も強いため、スキンシップや遊びでコミュニケーションをとる時間を設けることも大切です。

興奮しやすく吠えやすい傾向もあるので、吠え対策のしつけだけでなく落ち着ける環境づくりも重要です。犬のハウスを玄関から遠い静かな部屋にするなど、ポメラニアンの性格を理解して工夫してください。

被毛は硬い上毛と厚い下毛の二重構造です。毛量が多いのでピンブラシなどを使って1日おき程度にはブラッシングをしましょう。定期的にグルーマーなどプロに毛の手入れに関して相談しましょう。

 

●参考文献
「はじめてでも失敗しない 愛犬の選び方」(幻冬舎)
「JKC全犬種標準書第12版」(一般社団法人ジャパン ケネル クラブ)
「犬の家庭医学」(幻冬舎)
一般社団法人ジャパン ケネル クラブ ホームページ

 

執筆者:金子志緒

ライター・編集者。レコード会社と出版社勤務を経てフリーランスになる。主に動物や防災に関する雑誌、書籍、ウェブメディアの制作に携わり、企画から入稿まで担当。愛玩動物飼養管理士1級、防災士、いけばな草月流師範。甲斐犬のサウザーと暮らす。
Works:www.shimashimaoffice.work