犬の品種とは

人と犬との関係は2万年以上昔に始まったといわれています。人は犬を狩猟、家畜の誘導、護衛、愛玩など、さまざまな目的に使用し、目的に合わせて姿形を変えてきました。そのため、犬の品種はバラエティに富んでいて、大きさも性格もさまざまです。犬を家族に迎えようと思ったときに、どの品種を選べばいいのか迷ってしまったり、一目ぼれで迎えてからミスマッチに気づいたりする人もいます。家庭に合う犬を迎えるためには、品種の特徴、性格、行動などの傾向を知ることが大切です。

犬の品種の数

犬にはさまざまな品種がいます。体重3kgに満たないチワワ、100kgのセント・バーナード、胴長短足のダックスフンド、鼻ぺちゃ顔のフレンチ・ブルドッグ……大きさ、容姿、性格は大きく異なりますが、すべて犬の品種です。

品種登録団体が公認した犬には品種名が正式につけられます。国際畜犬連盟では約350品種を公認し、日本のジャパンケネルクラブではそのうちの約200品種を登録しています。公認されていない犬も含めると世界には700〜800の品種があるといわれています。

犬の品種がこれほどたくさん生まれたきっかけは、住んでいる地域の気候に適応するために体格や被毛が変わっていったことでしょう。さらに人の手で猟犬や牧羊犬などの使役目的に合う犬を生み出して、さらにバラエティに富んだ品種が登場しました。

特に欧米では犬の品種改良が盛んに行われ、1800年ごろから現在までの約200年間で品種が急激に増えました。日本では品種改良は積極的に行われてきませんでしたが、日本独特の品種がいくつか生まれました。

品種による特性を知ろう

品種改良は使役に必要な能力を強化するために行われたので、その品種の歴史やルーツを見ると品種の特性がわかります。例えば、獲物を追い立てる猟犬として働いてきたダックスフンドやビーグルは、吠え声が大きい犬同士をかけ合わせて強化されています。獲物を追跡する猟犬は嗅覚を、荷物を運搬する犬は力と体格を、愛玩犬はかわいらしく見える特徴を強化されているのです。

現在は犬を使役することが少なくなりましたが、品種登録団体によって品種の特性を損なわないようにブリーディングが行われています。かつて求められた仕事をしているときは好ましく優秀な能力だったとしても、現在の家庭犬としては問題になる特徴も少なくありません。たとえば吠え声は騒音トラブルに、優れた嗅覚は拾い食いにつながります。

また、品種改良においてでてきた特性が現代の社会において結果的に飼いづらさにつながることもあります。

家庭に合う犬と暮らすために

新たに犬を迎えるときは、家庭に合う品種を選ぶことが大切です。近年は飼い主と犬のミスマッチが問題になっています。飼い始めてから「こんなはずじゃなかったのに」と後悔しないように、まずは家族で希望の犬を相談することから始めましょう。

最初に確認すること
  • 好きな犬のタイプ(かわいい犬、賢い犬、ワイルドな犬など)
  • 犬とやりたいこと(のんびり過ごしたい、スポーツを楽しみたいなど)
  • 住環境(自然が多い地域の一軒家、都市部の集合住宅など)
  • ライフスタイル(留守番の時間の長さ、来客の頻度など)
  • 家族構成(子どもがいる、猫がいるなど)
  • 地域の気候(温度、湿度など)

犬の品種改良は使役に必要な能力を強化するために行われたので、犬の歴史やルーツを調べれば性格や行動、適している気候や温湿度などの品種特性がある程度わかります。品種によって得意なことや苦手なことがあるので、犬を迎える前に品種の成り立ちを知っておきましょう。もちろん個性もありますが、希望する品種を知る手がかりとして活用してください。

トリミングやグルーミングなど必要な手入れの頻度や方法、かかりやすい病気や特に気をつけなくてはならない健康管理も品種によって異なります。食費や予防接種といった一般的な費用の他に、定期的なトリミング代など品種によってかかる費用があることも考えておきましょう。

希望する犬の品種を絞れたら、飼い主やブリーダーに性格や注意点などを聞くのも良い方法です。信頼できるブリーダーであれば入手の相談もできます。

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もし困ったことが起きたら

家庭に合う犬を迎えるのが理想ですが、飼い始めてからミスマッチに気づいたとしても遅くはありません。「氏より育ち」ということわざのとおり、犬の性格は品種に加えて育て方にも影響されます。

人のほうが犬の特徴に合わせて住環境やライフスタイルを少し変えたり、犬に必要なしつけを行ったりすれば、ミスマッチが少しずつ解消されていくはずです。犬の育て方を学ぶためにしつけ教室に通うのもおすすめです。子犬から老犬まで幅広く対応している施設もあるので、接し方のアドバイスがほしいときにも相談しましょう。

もし吠え声や攻撃性などの深刻な問題が出ている場合は、家族で悩みを抱え込まないでください。品種特性に詳しいドッグトレーナーや行動治療学に詳しい獣医師などの専門家に早めに相談しましょう。愛犬と幸せに暮らせる方法がきっと見つかります。

 

 

●参考文献
「はじめてでも失敗しない 愛犬の選び方」(幻冬舎)
「JKC全犬種標準書第12版」(一般社団法人ジャパン ケネル クラブ)

一般社団法人ジャパン ケネル クラブ ホームページ

 

執筆者:金子志緒

ライター・編集者。レコード会社と出版社勤務を経てフリーランスになる。主に動物や防災に関する雑誌、書籍、ウェブメディアの制作に携わり、企画から入稿まで担当。愛玩動物飼養管理士1級、防災士、いけばな草月流師範。甲斐犬のサウザーと暮らす。
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