犬種選びのポイント

愛犬を迎えた日から楽しい暮らしが始まります。と言いたいところですが、理想と現実のギャップに驚く人が大半です。中でも「こんなに大変だとは思わなかった」と感じる飼い主が多い犬の品種を紹介します。飼い始める前の品種選びの参考にしてください。すでに迎えていて困っていることがあれば、その犬に詳しいドッグトレーナーに相談しましょう。

小さくても意外と気が強い品種

小さくてかわいい見た目に反して、思いのほか気が強い品種もいます。大きさや見た目のかわいさだけで選んでしまうと、こんなはずじゃなかったとなるかもしれません。

該当する主な品種

ヨークシャー・テリア、ジャック・ラッセル・テリア、パピヨン、ミニチュア・ピンシャー

ヨークシャー・テリアの特徴

「動く宝石」と呼ばれる美しい犬です。シルキーな長毛をリボンで結んだ姿がトレードマークでしたが、近年は短いカットスタイルを楽しむ飼い主も増えています。テリアと名のつく犬は主に小動物の猟犬として用いられてきた歴史があり、ヨークシャー・テリアもネズミを捕らえる天性のハンターとして活躍していました。

祖先のテリアの気質を受け継ぎ、愛玩犬のような容姿に反して警戒心が強く、人や小動物、犬への攻撃性も高い傾向があります。特に子どもや小さいペット、同居する小型犬がいる家庭は要注意です。活発で遊び好きという好ましい面もありますが、かわいいだけではない特徴を理解したうえで飼うことが重要です。

ジャック・ラッセル・テリアの特徴

小型犬とは思えないパワフルな犬がジャック・ラッセル・テリアです。愛好家の間で「軽自動車にF1のエンジンを積んだ犬」といわれ、ヨーロッパでは現役の猟犬です。3種類の被毛があり、短毛のスムース、短毛と長毛が混ざったブロークン、長毛のラフに分かれます。

優れた猟犬の証である活動性や興奮性の高さは、家庭犬として暮らすうえで問題に発展することが少なくありません。特に運動不足によるストレスは問題を助長します。体を動かすことが好きな反面、トレーニングへの意欲は低めなので、しつけに関してはドッグトレーナーに相談しましょう。

吠え声が大きい品種

猟犬をルーツにもつ犬の中でも、特に獲物を追い立てたり追跡する役目をしていた品種は、よく吠え、森の中でも聞こえるように声が大きく響くように改良されています。また、家畜を追い立てて移動させる役目をしていた品種もよく吠える傾向があります。

該当する主な品種

ビーグル、ダックスフンド、バセット・ハウンド、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、シェットランド・シープドッグ

ビーグルの特徴

紀元前のギリシアにいたウサギ狩りの猟犬がルーツとされています。16世紀のイギリスではすでにビーグルという品種名で呼ばれていました。有名なキャラクターの「スヌーピー」のモデルになった犬です。体重10kg前後で猟犬としては小さいものの、獲物を追い立てるのに適した大きい吠え声の持ち主です。

吠えやすい上に、体格の割には声が大きく太く、よく響くため、集合住宅や住宅が密集している地域では騒音トラブルになる可能性もあります。根気よくしつけをすることである程度は抑えられますが、もともと吠えることを仕事にしてきた以上、ゼロにすることはできません。むしろ多少吠えても構わない環境を整えたほうがよいでしょう。

呼吸器に注意を要する品種

頭部に対してマズルが短い、いわゆる鼻ぺちゃの犬のことを「短頭種」といいます。短頭種はマズルを極端に短くしたため、鼻腔が少なく、一般的なマズルの犬より気道が狭くなっています。

愛嬌たっぷりの顔立ちですが、鼻が短くなるよう改良されたことで気道がつぶれて狭くなっているので、呼吸困難のような状態になっています。短頭種は成長に伴い複数の呼吸器の病気を発症することがあり、「短頭種気道症候群」とも呼ばれます。頻繁にいびきをかく、口を開けて息をする、呼吸のたびにガーガーと音がする、といった様子が見られたら、息苦しさを感じているサインです。早めに動物病院に相談しましょう。肥満は気道をさらに狭くしてしまうため、体重管理にも注意が必要です。

また、鼻腔の表面積が少ないため、パンティング(体温を下げるために口を開けてハアハア息をすること)など呼吸による体温調節の効果が低いという特徴があります。高気温の環境や夏の暑さで熱中症になりやすいので、温度調節に注意する必要があります。これは、いわゆる「短頭種」だけでなく、チワワなどの頭部を大きくマズルを小さく改良した品種にもあてはまります。

該当する主な品種

フレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズー、ボストン・テリア、チワワ

大型犬を家族に迎えた時に考えておくこと

大型犬は、おおらかで性格が優しい犬が多いので、子どもがいる家庭でも迎えやすいのが特徴です。しかし体が大きく体重もあるため、散歩のとき犬に突然引っ張られて転倒するなど、万一の事故が起きた場合の影響も大きいので注意しましょう。
高齢になった時の介護の負担も考えておく必要があります。大型犬を迎えるときは10年先の自分を想像して検討しましょう。食費や獣医療費等も高めになりますから、生涯かかる費用のことも考えておきましょう。

該当する主な品種

ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ジャーマン・シェパード・ドッグ、秋田犬、グレート・ピレニーズ、レオンベルガーなど

2つの品種をかけ合わせたクロスブリード

近年は2つの品種をかけ合わせる「クロスブリード」が流行しています。マルチーズとトイ・プードルから生まれたマルプー、チワワとミニチュア・ダックスフンドから生まれたチワックスなどです。これらの犬を飼う場合は、迎えてから「思っていた性格と違う」ということが起きないように、両親犬の品種の特徴を知っておく必要があります。

また、両親犬からは体質や性格の長所だけでなく、短所を受け継ぐこともあります。クロスブリードの品種はオンリーワンの魅力がありますが、双方の品種が抱える問題が現れることも想定して迎えましょう。

 

●参考文献
「はじめてでも失敗しない 愛犬の選び方」(幻冬舎)
「JKC全犬種標準書第12版」(一般社団法人ジャパン ケネル クラブ)
「犬の家庭医学」(幻冬舎)

一般社団法人ジャパン ケネル クラブ ホームページ

 

執筆者:金子志緒

ライター・編集者。レコード会社と出版社勤務を経てフリーランスになる。主に動物や防災に関する雑誌、書籍、ウェブメディアの制作に携わり、企画から入稿まで担当。愛玩動物飼養管理士1級、防災士、いけばな草月流師範。甲斐犬のサウザーと暮らす。
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