犬の品種③ダックスフンド

胴長短足の愛嬌のある姿が目を引くダックスフンドは、3つのサイズと3つの毛種があるバラエティに富んだ品種です。活発さと飼い主への愛情深さが魅力ですが、警戒心の強さや吠え声の大きさが問題になることもあります。ここでは日本で特に人気があるミニチュア・ダックスフンドについて解説します。

品種の由来

ダックスフンドの祖先は、中世のヨーロッパで主にアナグマ猟に用いられてきた猟犬です。品種名の由来はドイツ語の「アナグマ(ダックス)」と「犬(フント)」です。日本では英語読みのダックスフンドで登録されていますが、原産国のドイツでは「テッケル」とも呼ばれています。

狭いアナグマの穴に入れる短い足の犬が重宝され、ブリーディングを重ねて現在の体型になりました。祖先はスムース・ヘアーで、16世紀ごろにスパニエル種との交配でロング・ヘアーが生まれ、テリア種との交配でワイアー・ヘアーが生まれました。日本では2000年ごろから人気の出た品種です。

ダックスフンドの特徴

日本で最も頭数が多いのはロングヘアード・ミニチュア・ダックスフンドです。愛嬌のある胴長短足の体型だけでなく、甘えん坊な性格も愛された理由でしょう。猟犬の歴史を持つ犬らしく、飼い主とコミュニケーションをとりながら活動することを好みます。

サイズを胸囲で分ける珍しい品種です。これは胸が厚すぎないほうが獲物の巣穴で身動きが取りやすいという考え方によります。ミニチュアとカニーンヘンは体格差が少ないものの、カニーンヘンのほうが興奮性や活動性がやや高い傾向があります。

犬種標準
  • 原産国 ドイツ
  • 胸囲 生後15カ月で測定 スタンダード オス:37~47cm/メス35~45cm、ミニチュア オス:32~37cm/メス:30~35cm、カニーンヘン オス:27~32cm/メス:25~30cm
  • 毛種 スムース・ヘアー、ロング・ヘアー、ワイアー・ヘアー
  • 毛色 レッド、ブラック・タン、ダップルなど

ダックスフンドのしつけ

過剰に吠えさせない対策

獲物の居場所を吠えて知らせる猟犬だったこともあり、小さくても吠え声が大きい品種です。吠え始めると落ち着くまでに時間がかかるのも飼い主を悩ませる問題になります。家族には甘えん坊でも他者には警戒して吠えるため、子犬のころからいろいろな人や犬に慣れるための「社会化トレーニング」を行いましょう。吠える行動に対しては叱るのではなく、吠える行動以外に何をするかを教えていく方法が適切です。

トイレトレーニング

胴が長いので、前足がトイレシートに乗っていても後ろ足がはみ出ていることが多く、結果的にトイレの失敗が増えてしまいます。犬がトイレを認識しやすいようにサークルで囲い、トイレシートには大きめのワイドサイズ(60×45cm)やスーパーワイドサイズ(90×60cm)を選ぶのがポイントです。

ダックスフンドのトイレトレーニングは根気よく行うことが大切です。排せつしそうなタイミングでトイレに誘導し、成功したらほめてごほうびを与えることを繰り返します。覚えたように見えても続けることが重要です。

ダックスフンドに多い病気

椎間板ヘルニア

背骨の間でクッションの役割を果たす椎間板が神経を圧迫し、痛みや麻痺が現れます。最初は痛みから始まり、進行すると足などに麻痺が出たり、排せつができなくなったりします。歩き方がおかしい、歩けない、腰が抜けたようになる、身体に触ると急に敏感に反応する、といった変化が見られたら椎間板ヘルニアの可能性もあるので、なるべく早めに動物病院に行ったほうがよいでしょう。

主な症状
  • 抱き上げたときにキャンと鳴く
  • 背中を丸めて動きたがらない
  • 歩くときにふらつく

普段から歩き方、排せつの姿勢や様子など観察し、日常生活に気をつけることが大切です。また、肥満は背骨や関節に負担をかけるので、体重管理にも気をつけましょう。

進行性網膜萎縮症

遺伝性の病気で、徐々に進行し最終的に失明します。治療法は残念ながら見つかっていません。症状として最初は夜に外へ行くことや暗い場所での上り下りを嫌がったり、光の少ないところで不安になったりしますが、最終的には明るいところでの視覚も消失します。ダックスフンドだけではなく、他の犬種でも見られる病気です。

発症した場合は犬にとって安全な環境を整えることが第一になります。

日常生活で気をつけること

椎間板ヘルニアを発症しやすいので、ソファを低くしたり滑りにくい床材を敷いたりする生活環境の安全管理も大切です。また、異物を誤飲する事故を起こしやすいので片付けも徹底しましょう。

小さくても体力があり、活動性も高いので、散歩に加えてボールや知育トイを用いた楽しい遊びを取り入れましょう。ダックスフンドは運動不足も吠えやすさの原因の一つになりますが、しっかり発散させることで問題解決につながります。

実はとても食いしん坊です。愛犬のおねだりに負けておやつを与えていると太ってしまいます。肥満は関節に負担をかけるだけでなく万病のもとになるため、おやつの量は一日の主食のカロリーの10%程度に収めて、与えた分を主食から引きましょう。

 

●参考文献
「はじめてでも失敗しない 愛犬の選び方」(幻冬舎)
「JKC全犬種標準書第12版」(一般社団法人ジャパン ケネル クラブ)
「犬の家庭医学」(幻冬舎)
「ダックスフンド部会報」(JKCダックスフンド部会)
一般社団法人ジャパン ケネル クラブ ホームページ

 

執筆者:金子志緒

ライター・編集者。レコード会社と出版社勤務を経てフリーランスになる。主に動物や防災に関する雑誌、書籍、ウェブメディアの制作に携わり、企画から入稿まで担当。愛玩動物飼養管理士1級、防災士、いけばな草月流師範。甲斐犬のサウザーと暮らす。
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