段階に応じたサポートと介護予防

介護予防はエイジングケアです。早すぎることも遅すぎることもありません。段階に応じたサポートでいつまでも健やかな毎日を送るため、今日から予防ケアを始めましょう。ただしやりすぎることは厳禁です。できることを奪わない、自分でできる自信を失わせないことが大切です。

介護段階に応じたサポート

介護段階に応じた必要なサポートを見ていきましょう。

(介護度分類は独自にまとめたものです)

 生活動作 飲食 トイレ 起き上がり
立ち上がり
要支援前期 時間がかかるがおおむね自立して生活できる ふらつくことがあるが自力で飲食可能 ときどきお漏らしや失敗がある おおむね自力でできる
要支援後期 活動量が減る

行動範囲が狭くなる

時間がかかるが自力で飲食可能 失敗が増える 時間はかかるが自力でできる
要介護前期 ふらつき、転倒など動作が不安定になる

狭い所から出られなくなる

体を支えれば自力で飲食可能 排せつの意思はある

トイレに間に合わない

 

起き上がりや立ち上がりを介助すれば立位維持や歩行ができる
要介護中期 自力での移動が困難 口まで運べば飲食できる 排せつのコントロールができない

 

支えがあれば姿勢を維持することができる
要介護後期 寝返り・体重移動が困難 自力での飲食は困難 排せつが困難 姿勢を維持することができない

 

要支援前期

自立した生活が可能で、不安な様子は見られず留守番もできます。

生活機能全般の低下予防のためのリハビリ支援を行います。

筋力低下予防を積極的に行いたい時期です。

リハビリ支援には、動かしやすい体にするための整体やマッサージ、筋力アップのための運動療法を取り入れましょう。

要支援後期

自立した生活は可能で留守番もできますが、失敗することが増え、日常生活の中で躊躇や不安な様子がみられるようになります。

失敗を減らして自信を失わせないようにすることと、できることを遠ざけないように配慮することが大切です。滑り止め対策や、車いすやハーネスなどの介助グッズで衰えた機能を補助し、健常な機能を損なわないようにします。

要介護前期

自力での立ち座りが困難になると、思い通りの行動ができなくなります。転倒や、狭いところに入り出られなくなるような入り込みなどが増え、怪我予防の対策が必要です。

苛立ちや意欲低下が見られることがあります。できることを維持することが大切です。衰えた機能を補いながら稼働する機能を維持します。

要介護中期

自力での移動が難しくなるため、過ごす場所の温度や湿度の調節や、水分補給などの配慮が必要になります。

就寝時以外は、寝床での体位は、クッションなどで上体を起こして整えます。

要介護後期

寝返りなど自力での体重移動が困難になると、床ずれに気をつける必要があります。長時間同じ場所に継続して体圧がかからないように、体位交換をします。安楽な姿勢が保てるように、クッションなどで体位を調整します。

身体機能をサポートする介助グッズ

身体機能をサポートする介助グッズは転ばぬ先の杖です。できなくなってからではなく、できなくならないためにぜひ早くから使い始めてください。

滑り止め対策 介護ベッド ハーネス 車いす ポジショニングクッション オムツ
要支援前期
要支援後期 (〇) (〇)
要介護前期
要介護中期
要介護後期

 

介護マット

足腰の不安を感じたら、介護マットは早期から取り入れて欲しい介護用品です。

低反発と高反発があります。

  • 高反発マットは、立ち座りや寝返りの筋力を補い動作を楽にするため、血行障害を予防してくれます。筋力低下予防や床ずれ予防に有用です。トレーニングから寝具としてまで、幅広く使用できます。ブレスエア®素材のものは軽量で洗いやすくおすすめです。
    しかし、体を包み込まないため体位が安定しません。痩せが進んでくると安定が悪くて寝心地は悪くなります。
  • 低反発マットは、体を軟らかく包み込み寝心地は良いですが、身動きがとりづらくなります。姿勢を維持するためには有用です。

マットを使用する際には寝かせてみて隙間ができたり、足が宙に浮いた状態になる場合などはクッションなどで隙間を埋めたり緊張ができる場所を面で支えるようにすると楽な姿勢を作ることができます。

底つきの確認方法:マットの下に手の平を上にして差し込んで感じる重さが、長座のふくらはぎの下に入れたときの圧より軽ければ血流遮断は起きません。

 

介護マット

介護用ハーネス

移動動作がスムーズでなくなったときに役立つのはハーネスです。立ったり座ったり、歩く動作のサポートをします。自分の力で立って動くことをサポートするものです。立ち上がり補助や寝返り補助にも使用します。

ポジショニングのためのクッションの利用例

体重を支える部位が滑らないように支持します。また、隙間を埋めて安楽な姿勢を支持します。

クッションの使用例1

クッションの使用例2

クッションの使用例3

車いす

犬は4足歩行動物なので、車いすは歩行動作と立位の補助具となります。

2輪と4輪がありますが、2輪車は移動のサポートが主になります。

4輪の車いすは立つ姿勢をサポートしてくれるので、車いすを使用することで姿勢を保つことが楽になり、衰えた部分の機能回復と健常部分の維持につながります。老化によって筋力が衰えてきているシニアさんには立つ筋力のトレーニングに役に立ちます。車いすは歩く代わりのもの、と思われることが多いですが、4本足の犬には立った姿勢を作ることはとても大切です。安心して立つことができると動くための筋肉を安心して使うことができるので、筋力の維持にとても役に立ちます。

車いすは歩けなくなってからではなく、早くからトレーニングのために取り入れてください。

 

 

車いす

 

さいごに

犬猫の介護ケアは現在も発展途上です。本記事でお気づきの点がございましたらお知らせください。

ペットホームケアえるそる https://phcelsol.jimdofree.com/

 

執筆者:松本晃子
獣医師
ペットホームケアえるそる:犬猫訪問鍼灸・介護リハビリ 訪問獣医師
https://phcelsol.jimdofree.com/
ペットケアサービスLet’s(高齢犬デイケアサービス&犬の幼稚園):デイケア担当 非常勤
赤坂動物病院:シニアケア担当 非常勤
日本獣医生命科学大学卒、獣医中医師・獣医推拿整体師、
獣医保健ソーシャルワーカー®、横浜市動物適正飼育推進員