ペットロスとグリーフケア(犬のご家族)

ペットロスとは

大切な存在を失ったことにより抱える嘆きや悲しみ、それによる心や体などの反応をグリーフといいます。

大切な存在である愛犬とお別れをした後に抱えるグリーフ、それをペットロスといいます。

愛犬との関係性、愛犬への想いは人それぞれですので、抱える哀しみの大きさ、おきる変化は様々です。

次のような変化がみられることがあります。

気持ちの変化
  • どうしようもなく哀しい、寂しい
  • 様々な後悔や、自責の念に苛まれる
  • 心にぽっかりと穴が開いたように感じる
  • 孤独感におそわれる
  • 何もやる気がしない
  • 物事に集中できず、ぼんやりしてしまう  など

これらの気持ちは、大切に想えばこそ生じるものです。異常なことではありません。

身体の変化
  • 食欲がない
  • 眠れない
  • 疲れやすい
  • 胸が苦しい
  • 頭痛、めまい、腹痛、胃痛 など

これらも、ペットロスとして自然な反応です。ただ状態が長期にわたると本格的に体調を崩すことがあります。その場合は医療機関を受診しましょう。

行動の変化
  • 涙が溢れてとまらない
  • 生活リズムが乱れる
  • 人と会うのがおっくうになる
  • 家に引きこもる  など

愛犬の世話や散歩をすることで生活のリズムを整えている方は多いものです。その愛犬が亡くなると世話をする必要がなくなり、生活リズムが狂うことがあります。

また、気持ちを理解してもらえない対応をされることによって傷つき、外出や人と会うのが億劫になることもあります。

ペットロスが癒える過程

大切な愛犬との別れは辛く寂しいものです。

なかなか愛犬が亡くなった事実を受け止められなかったり、他人や自分に対して怒りを感じたり、落ち込んでやる気がでなかったり…など、様々な気持ちになります。

仕事や家事をしている時には普通に動けても、家でくつろごうとすると、どっと哀しみが押し寄せることもあります。

ただ、このように日常生活を送り、様々な想いの間で揺らぎながら、少しずつ哀しみから癒えていくのも一般的な傾向です。

大切なことはペットロスとの向き合い方を意識すること、また一人で想いを抱えきれない時には、他の方のサポートを受けることです。以下に方法をいくつかご紹介いたします。

ペットロスとの向き合い方

自分を大切にゆっくりと過ごす

「自分は大きな哀しみの中にいる」という事実を自覚し、自分自身を労わることが大切です。

楽しむことに罪悪感を覚えることもあります。しかし、マッサージ、アロマセラピー、好きな音楽を聴く、自然に触れるなど自分を労わる時間は、大切にしてください。

信頼できる人と自分の気持ちを分かち合う

共に暮らした動物を失った哀しみは、誰にでも理解してもらえるものではありません。

「ペットが亡くなったくらいで…」といった対応をされることで傷つくこともあります。

1人で哀しみを抱えることがつらくなったら、愛犬を通して知り合った犬仲間さん、お世話になった動物病院のスタッフ、トリマーさん、ペットシッターさんなど、信頼でき、気持ちを理解していただける方に気持ちを聴いていただくことをおすすめします。

身近にそのような方がいない時には、わかち合いの会に参加したり、カウンセラーなどの専門家に話を聴いてもらうと良いでしょう。

お別れの儀式を行う

愛犬が亡くなったという事実に向き合うことはつらいことですが、葬儀やお別れ会などの儀式を行い、新たなる世界に送り出してあげましょう。

飼い主として旅立ちを見届けることは、哀しみが癒える過程を一歩踏み出すこととなります。

形式の整ったものでなくてかまいません。

また月命日、四十九日、お彼岸、お盆、一周忌などの区切りに、亡き子を想い自分らしい供養をすることは、気持ちの整理に繋がります。

グリーフケアとして心掛けたいこと~ペットロスを抱えた方へ望ましいサポート~

大切な存在を失って哀しみを抱える方に寄り添い、哀しみが癒えるサポートを行い、再びその人らしく生きることができるように援助することをグリーフケアといいます。

敬う気持ちをもって、話を聴いたり、共に過ごす

愛犬を失った方が今どのような気持ちでいるか、に想いを馳せることがその方への大きなサポートとなります。

亡くなった事実をなかなか受け入れられない時や、落ち込んで人と会いたくない時には、話をすることが負担になることがあります。

ペットロスの方の心の状態は、時間の経過や様々な経験をかさねることによって、変化していきます。

心の状態を含めてその方を丸ごと尊重する気持ちをもって関わることが、大事な心構えとなります。

 

また、

「もう半年たったんだから…」

「いつまでも悲しんでいると、天国に行けないよ」

「新しい子を迎えればいいじゃない」

形式的なアドバイスや安易な励ましは、その方を傷つけることがあります。このような言動をしないよう、注意が必要です。

 

愛犬と会えなくなることは悲しく辛いものです。しかし共に暮らした日々は、かけがえのない想い出です。

想い出が消えることはありません。

目には見えないのに、愛犬との絆を感じられるようになる…。そのような新たな関係性を見つけることも、哀しみが癒える助けとなります。どのような新たなる関係性を感じられるようになるかを意識することが、生きがいやよろこびに繋がっていきます。

 

執筆者:先崎直子

獣医師、心理カウンセラーとして、ペットの看取り、ペットロスの方へのサポートを行っています。

●資格
獣医師(麻布大学獣医学部獣医学科卒)
一般社団法人 日本グリーフ専門士協会認定 ペットロスカウンセラー/グリーフカウンセラー
一般社団法人 全国心理業連合会認定 プロフェッショナル心理カウンセラー(一般)