犬の品種②トイ・プードル

くるくるとした巻き毛のトイ・プードルは、さまざまなカットスタイルを楽しめる品種です。まるでぬいぐるみように見えますが、じつは活発で遊び好きなタイプです。学習能力が高くトレーニングへの意欲も充分あり、初心者でも比較的飼いやすいものの、遺伝性疾患を抱えていることもあるので健康状態に注意してください。

品種の由来

トイ・プードルの祖先は昔からヨーロッパ各地にいた巻き毛の犬です。当時は大型のスタンダード・プードルが中心で、ハンターが撃ったカモを運ぶ猟犬として主に用いられていました。やがてドイツからフランスへ移入し、16世紀ごろに上流階級で人気が出て小型化され、18世紀にはトイ・プードルが誕生しました。

水辺で作業がしやすいように被毛の一部を刈り取っていた習慣に美的な要素が加わり、ドッグショーなどで見られるクリップという独特なカットスタイルが誕生したのです。日本では2000年代に考案されたテディベアのように見えるカットが話題を呼び、頭数が急激に増えました。現在もさまざまなカットスタイルを楽しめる品種として最も人気があります。

トイ・プードルの特徴

プードルには4つのサイズがあり、スタンダード、ミディアム、ミニチュア、トイの順に小型化されています。フワフワの巻き毛はカットを楽しめるだけでなく、抜け毛やにおいが少ないことも人気の秘密でしょう。日本ではレッドの毛色が好まれていますが、他にもブラックやホワイト、クリームなどさまざまです。

フレンドリーで、初心者でも比較的飼いやすい品種です。祖先が猟犬ということもあって小型犬のトイ・プードルでも活発です。留守が多い家庭では特に意識して散歩などの時間を確保してください。

プードルは、その被毛の性質上、毎日のブラッシングと定期的なトリミングが必須です。ほかの犬種と暮らすより、ブラッシングの時間やトリミングの費用がかかることを考えておきましょう。

犬種標準
  • 原産国 フランス
  • 体高 体高:24(−1cmまでは許容)〜28cm/理想体高:25cm
  • 毛色 ブラック、ホワイト、ブラウン、グレー、フォーン

※タイニー・プードルやティーカップ・プードルと呼ばれる犬は確立した品種ではないので、迎える前に健全性を確認しましょう。

トイ・プードルのしつけ

触られることに慣らす

トイ・プードルには毎日のブラッシングと定期的なトリミングが必須です。体を触られるのが好きな犬に育てましょう。まずは背中から触り、慣れてきたら頭、耳、尾、足など全身も同様に練習しましょう。

次に体をとかすスリッカーブラシ(ソフトタイプ)と、顔まわりなどの仕上げに使うコームを用意します。触る練習と同じく背中から少しずつ慣らします。とくに毛玉ができやすい耳、脇、内股も丁寧にブラッシングができるようにするのが目標です。

コミュニケーションとトレーニング

トイ・プードルは甘えん坊で寂しがり屋な性格なので、日ごろから遊んだりするコミュニケーションの時間を確保することが大切です。家族と離れるような場合や災害時にも便利なツールになるので、1頭でもクレート(ハウス)で落ち着いて過ごせるように「クレートトレーニング」を行いましょう。

トイ・プードルに多い病気

膝蓋骨脱臼(パテラ)

後ろ足の膝蓋骨(膝のお皿)がずれてしまう状態のことで、小型犬によく見られるのは内側にずれる内方脱臼です。遺伝的な影響が強い病気です。

主な症状
  • ときどき膝を伸ばしたスキップのような歩き方をする
  • 足を引きずって歩くことがある
  • 腰をかがめて内股で歩く

重症度によってグレード(段階)が4つに分かれます。動物病院で説明を受けるときは重症度を教えてもらうとよいでしょう。治療法の選択にも役立つ情報になります。

白内障

目の水晶体が変性して白く濁る病気です。若齢性白内障は1〜2歳で発症することもあります。よく観察して、早期発見することが重要です。いろいろな治療法があるので、愛犬に合った治療法を動物病院で相談してみてください。点眼薬による治療や、人工レンズを入れる外科的手術などがあります。

主な症状
  • 目に白く濁っている部分がある
  • 物にぶつかることが増えた
  • 目をしょぼしょぼさせる(ぶどう膜炎などを併発)

白内障と似た症状の病気として、水晶体が硬くなって白く見える「核硬化症」があります。視力にはほとんど影響しないため基本的に治療の必要はないとされていますが、白内障と判別しにくいことがあるので、気になる場合は動物病院に相談しましょう。

日常生活で気をつけること

トイ・プードルは猟犬をルーツにもつ品種なので、小さくても運動能力が高く、家族と一緒に活動したい欲求も持っています。スキンシップだけでなく、家族で出かけたり遊んだりする時間をつくるように心がけてください。

フレンドリーなタイプも多いので、散歩中に会う人や犬とあいさつさせたくなるかもしれません。しかし相手が犬好きで仲良くできるとは限らないので、愛犬が近づこうとしてもまずは落ち着かせて、相手に尋ねてからあいさつさせましょう。

好奇心旺盛で学習能力も高く、家族の指示や家庭の習慣をすぐに覚えてくれます。ただし、いたずらなども覚えやすいので安全の管理に気を配りましょう。たとえばコンセントや電源タップをフェンスで囲う、ゴミ箱をふた付きに変える、誤飲しそうなものは引き出しにしまう、といった工夫が必要です。

 

●参考文献
「はじめてでも失敗しない 愛犬の選び方」(幻冬舎)
「JKC全犬種標準書第12版」(一般社団法人ジャパン ケネル クラブ)
「犬の家庭医学」(幻冬舎)
一般社団法人ジャパン ケネル クラブ ホームページ

 

執筆者:金子志緒

ライター・編集者。レコード会社と出版社勤務を経てフリーランスになる。主に動物や防災に関する雑誌、書籍、ウェブメディアの制作に携わり、企画から入稿まで担当。愛玩動物飼養管理士1級、防災士、いけばな草月流師範。甲斐犬のサウザーと暮らす。
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