猫の品種⑥ベンガル

がっちりと引き締まった筋肉質の体に小さめの耳と大きな目、そしてなんといってもヒョウ柄の模様。ワイルドな風貌を持つベンガル。遊び好きで行動派のベンガルと暮らす前に知って欲しいポイントを解説します。

品種の由来

1963年にアメリカのカリフォルニア州在住のジーン・ミルが、アジアに生息する野生の猫であるべンガルヤマネコ(Prionailurus bengalensis)とイエネコの掛け合わせに成功し、スポット模様の子猫を得たことがきっかけです。その後アビシニアン、ボンベイ、ブリティッシュ・ショートヘア、エジプシャン・マウを含む、様々な純血種の猫と交配してベンガルは誕生しました。

ベンガルの特徴

野性味溢れるベンガルは

  • 丸みのある三角顔に離れ気味についた目
  • 大きくて広い鼻
  • 筋肉が発達した力強い四肢
  • やわらかく、艶やかな被毛
  • 被毛の模様はロゼット(いわゆるヒョウ柄)でスポットとマーブルの2種類

を持つ猫です。

ベンガルの長毛版のベンガルロングヘアーという品種も誕生しています。

ベンガルの最大の特徴は、野生猫(ベンガルヤマネコ )とイエネコのハイブリッドということです。現在ではベンガルヤマネコの血が薄くなり性格も丸くなりましたが、開発当初は気性の荒い猫も多かったそうです。

 

代表的な野性猫とのハイブリッド猫としては

  • ベンガル=ベンガルヤマネコ×イエネコ
  • サバンナ=サーバル×イエネコ
  • チャウシー=ジャングルキャット×イエネコ
  • サファリ=ジェフロイネコ×イエネコ

がいます。

ベンガルに多い病気

ピルビン酸キナーゼ欠損症(PKDef)

ピルビン酸キナーゼとは赤血球の細胞膜の表面に存在する酵素であり、赤血球のエネルギー代謝に大きく関わっています。ピルビン酸キナーゼが欠損すると、赤血球の細胞膜がもろくなり壊れやすくなります。その結果、赤血球が壊れてしまい貧血が起こります。14,179頭の猫のDNAを解析したところ、ベンガルが好発性品種であることが確認されました。この病気は遺伝子検査が可能です。

症状としては

  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 運動が嫌いになる

ですが、進行すると

  • 立てない
  • 呼吸困難
  • 昏睡

に至ります。

残念ながら、ピルビン酸キナーゼ欠損症を完治させる方法はまだ開発されていません。対症療法を行いながら重症の場合には輸血を行います。

日常生活で気をつけること

ベンガルは好奇心旺盛で活発によく遊び、運動量は猫の中でも多い品種です。ただし他の品種に比べて、家族に対する攻撃行動や、トイレ以外での排泄や尿によるマーキングが多いという報告があります。他の猫に対しても攻撃的になることもあるので、新しく猫を飼う場合には相性の確認を慎重に行うようにして下さい。まだまだ野性の血が残っていて攻撃的になってしまう可能性は考えておいた方が良いでしょう。

活動量も多く、遊び足りないと精神的に不安定になることもあるため、広いスペースとキャットタワーなど運動できる空間を確保してあげて下さい。また日頃からたくさん遊んであげて、動きたい欲求を満たしてあげましょう。

 

●参考文献

  1. Wilhelmy J,Serpell J, Brown D. et al, Behavioral associations with breed,coat type and eye color in single-breed cats, J Vet Behav 13,80-87 :2016
  2. Bourguet A., Chaudieu G.,Briatta A., et al. Cataracts in a population of Bengal cats in France. Veterinary Ophthalmology. April 25.2017
  3. Grahm RA., Grahn JC., Penedo MC., et al. Erythrocyte pyruvate kinase deficiency mutation identified in multiple breeds of domestic cats. BMC Veterinary Research,2012

 

執筆者:服部幸

獣医師
経歴:
北里大学獣医学部卒業
2年半の動物病院勤務
2005年よりSyuSyu CAT Clinic 院長を務める
2006年にアメリカのテキサス州にある猫専門病院 Alamo Feline Health
Centerにて研修プログラム修了
2012年東京猫医療センターを開院する
2014年 JSFM(ねこ医学会)理事
15年間、猫の専門医療に携わる