猫の品種とは

猫と人との関わりの歴史

猫と人はいつ頃から一緒に暮らしていたのでしょうか?

猫と人の関わりを示す最古の記録はキプロス島に存在するシロウロカンボス遺跡(約9,500年前)から見つかっています。その遺跡からは位の高い人間の近くに一緒に埋葬された猫が発見されています。紀元前2000年頃のエジプトの壁画には、猫が飼われている姿が描かれており、穀物倉庫に侵入するネズミ駆除に役立ち大いに珍重されました。エジプトの遺跡からは猫のミイラも発掘され、とても大切にされていたことがわかります。

その後、中世〜近世ヨーロッパには猫は暗黒の時代を迎えます。猫は悪魔の象徴として焼かれることがあり、多くの猫が犠牲になりました。やがて、14世紀のペストの流行により猫の立場は大きく変わります。ペスト菌を媒介するネズミを駆除するために、人々は猫の助けを必要とし、猫の地位は向上しました。その後、少しずついわゆるペットとして人との生活を営むようになります。

現在では、日本を含む多くの国で猫の数の方が犬の数よりも多くなりファーストペットの地位を確立しています。特に日本では完全室内飼育が普及し人間との関わり合いもより密になりました。ペットから伴侶動物、そして家族として人間の生活になくてはならない存在となっています。

純血種の歴史

ここからは純血種の歴史を振り返ってみましょう。犬は昔から人の使役のために品種改良がなされ様々な純血種が生み出されていました。自由気ままな猫は人の言うことを聞かないため(ここが猫の魅力でもあります!)、長い間、人間の目的のために品種を作り出すことはされなかったようです。

1871年にロンドンのクリスタル・パレスで最初のキャットショーが開かれ、このショーは猫愛好家の発端となります。キャットショーは、様々な品種の猫の体格や体型、毛色、模様に注目を集め猫の魅力を広く伝えることになりました。以後、世界各地でさまざまな純血種の猫が作出され人々を魅了し続けています。現在日本の猫のうち約17%が純血種と言われており、その割合は年々増加しています。

猫との出会い

様々な魅力から純血種を選ぶのであればいくつかの方法があります。

  • ペットショップで出会う
  • 信頼出来るブリーダーを探す

が一般的ですが、最近では保健所や保護施設でも新しい飼い主さんを探している純血種の猫が見つかることもあります。また、猫カフェにいた純血種の猫が引退後、譲渡先を探していることもあるようです。

猫と人間が双方に幸せになるためにはその家族に合った猫との出会いが大切です。どのような場合でも猫を選ぶ際には見た目の可愛さだけで衝動的に決めてはなりません。

  • 猫のサイズ:大型の品種の場合ある程度の生活スペースが必要になります
  • 性格:品種によってはよく鳴き、運動量も多いこともあります
  • 被毛の長さ:長毛種はブラッシングやシャンプーがよりたくさん必要になります
  • 病気になった時に対応ができるか:猫の病気の看護には時間もお金もかかります
  • 最後に看取るまで責任を持って飼い続けることができるかどうか

をよく考えて決めてください。

純血種に多い病気

純血種だからといって病気にならないわけではありません。むしろ、遺伝病や一部の感染症などいくつかの病気はミックス猫よりも純血種の方がなりやすい傾向があります。その一例として、以下があります。

肥大型心筋症

心臓の筋肉が肥厚し、だんだん心機能が低下する病気。血栓の原因にもなります。

気をつけたい猫種

メインクーンラグドール、アメリカンショートヘアー、スコティッシュフォールド、ノルウェジアンフォレストキャット、ブリティッシュショートヘアーペルシャ

多発性嚢胞腎

腎臓の中に水の袋(嚢胞)がたくさんでき、次第に腎機能が低下する病気です。

気をつけたい猫種

ペルシャ、エキゾチック ショートヘアー、アメリカンショートヘアー、スコティッシュフォールドブリティッシュショートヘアー

糖尿病

血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌されなくなったり、効きが悪くなったりして体の細胞が糖を利用できなくなる病気。飲水量や尿量が多くなり痩せてきます。

気をつけたい猫種

ロシアンブルー、ソマリ、アビシニアン、バーミーズ

猫伝染性腹膜炎(FIP)

猫の腸に感染する猫腸コロナウイルス(FECV)※が体の中で突然変異を起こし強毒であるFIPウイルスに変化して起こる感染症。死亡率が高く治療が難しい病気。
※人間に感染する新型コロナウイルス(COVID-19)とは別のウイルスです。

気をつけたい猫種

アビシニアン、ベンガル、バーマン、ヒマラヤンラグドール

また他にもトリコモナス感染症(腸の中にトリコモナスという原虫が寄生し、慢性的に下痢を起こす)も雑種に比べて純毛種に多い傾向があります。

ここで誤解してはいけないのが、

  1. これらの品種だから絶対に病気になるというわけではない
  2. ここに記載していない品種以外でもこれらの病気になることがある

ということです。

また仮に病気になったとしても最後まで責任持って面倒を見る覚悟は必要です。

 

●参考文献

  1. Doi J, Hirota J, Morita A et al. Intestinal Tritrichomonas suis(=T foetus) infection in Japanese cats. J Vet Med Sci ,74:413-417,2012
  2. Riemer F, Kuehner AK, Ritz S, Clinical and laboratory features of cats with feline infectious peritonitis–a retrospective study of 231 confirmed cases (2000-2010). J Feline Med Surg, 18:348-56.2016
  3. Perdersen CN, An update on feline infectious peritonitis: Diagnostics and therapeutics. Vet J.201:133-141,2014
  4. Pesteanu-Somogyi LD., Radzai C., Pressler BM., Prevalence of feline infectious peritonitis in specific cat breeds. J Feline Med Surg. 8(1), 1-5,2006

 

執筆者:服部幸

獣医師
経歴:
北里大学獣医学部卒業
2年半の動物病院勤務
2005年よりSyuSyu CAT Clinic 院長を務める
2006年にアメリカのテキサス州にある猫専門病院 Alamo Feline Health
Centerにて研修プログラム修了
2012年東京猫医療センターを開院する
2014年 JSFM(ねこ医学会)理事
15年間、猫の専門医療に携わる