猫の品種③メインクーン

メインクーンの最大の特徴は、イエネコの中では一番大きな体とたくましい顔、そして優しい性格です。ジェントル・ザ・ジャイアントの異名を持つメインクーンと暮らす前に知って欲しいポイントを解説します。

品種の由来

1800年代のアメリカが起源とされ、アメリカ北東部のメイン州の港町に暮らす土着のネコと、船でやってきたアンゴラやノルウェージャンフォレストキャットなどの長毛のネコとの間に誕生したという説があります。ブラウンタビーの毛やその大きさ、そして尾の姿からアライグマ(ラクーン)との交雑種であるという伝説からその名前がつきました。

メインクーンの特徴

名前の由来となったメイン州のある極寒の大自然の中で生き抜くための、骨太で筋肉質な長くがっしりとした体を持ちます。強靭な四肢の足先は大きく、雪上を歩きやすいように足裏に毛が豊富に生え、セミロングの被毛は密度が高く暖かく、水を弾くなど雪原仕様になっています。マズルが四角く、口元がしっかりとした精悍な顔が特徴的です。耳は大きく、頭部のかなり高い位についていて、先端にはリンクスチップがあります。

イエネコの中では最も大きな品種の1つであり、オスの体重は10kgを超えることもあります。優しくて温厚な性格で無邪気で遊び好きな一面を持ちます。

メインクーンに多い病気

肥大型心筋症

肥大型心筋症とは、心臓(左心室)の筋肉が厚くなってしまい、機能が落ちてしまう病気です。

軽度の場合は運動が嫌いになったり寝ていることが多くなることがありますが、ほとんど症状がでないことも多いです。

進行すると次第に呼吸が苦しくなったり胸水が溜まったりします。心臓内に血栓を作ることがあり、それが流れていって足の血管に詰まると急に足が動かなくなり、最終的には壊死してしまう怖い病気です。

メインクーンはこの病気になりやすい品種として有名で、遺伝することが知られています。メインクーン に肥大型心筋症を起こす遺伝子MYBPC3(A31P)は解明されており、イギリスでは39.4%のメインクーンでこの変異が見つかったという報告もあります。この遺伝子変異を持っているかどうかは、動物病院を通じて検査機関で調べることができます。

肥大型心筋症を早期に発見するためには定期検診が必要です。身体検査や聴診に加えてレントゲン検査や超音波検査、血液検査を組み合わせることで診断が可能です。

残念ながら肥大型心筋症を完治させる治療法はまだ見つかっていません。心拍数を調整したり、心臓の負担を減らしたりして心臓の機能を保つお薬を飲みます。

股関節形成不全

股関節形成不全とは、股の関節(股関節)が正常に形成されない先天的な奇形の1つです。

症状は、後ろ足に力が入らず開いてしまうことがあります。どちらかというと子猫のうちに症状が強くでますが、大人になると周りの筋肉でカバーしてくれるため歩き方がぎこちなかったり、かばって歩く程度になることが多いです。米国での調査では24.9%のメインクーンがこの病気を持っていたという報告もあります。後ろ足を開いてしまったり足をかばって歩くようなら、一度動物病院でレントゲンを撮影していただくとよいと思います。

日常生活で気をつけること

メインクーンは大型の猫であるため広い空間が必要になります。また、トイレや食器なども体格に合わせて大きなものが必要になります。特にトイレが体に対して小さいものを使用すると、トイレが気に入らなくなり排尿を我慢することがあります。これを繰り返すと膀胱炎になることがあるため、大きなメインクーンが入っても中で向きを変えられるくらい、十分大きいトイレを用意しましょう。

猫の本やインターネットでは、体重が5−10kgになると記載されているものがあります。そのため体重が10kgまで増えても大丈夫だと誤解されていることがあります。この数字はあくまでも体格の大きなメインクーンはここまで大きくなることがある、というものであって10kgまで増えてもよいというわけではありません。その猫ちゃんに合わせて適切な体重を見極めて肥満にならないようにしましょう。適正体重がわからない場合は、動物病院で相談していただくと教えていただけると思います。

メインクーンに限らず、長毛種は飼い主さんがお手入れをしないと毛玉ができてしまいます。1日2回のブラッシングは欠かせません。特に脇の下や股の間は毛玉ができやすいため、念入りにブラッシングをするようにしてください。

●参考文献

  1. Richardson P., McKenna W., Bristow M., et al(1996):Report of the 1995 World Health Organization/International Society and Classification of cardiomyopathies. Circulation.93:841-842
  2. Godiksen MN., Granstron S., Koch J. et al Hypertrophic cardiomyopathy in young Maine Coon cats caused by the p.A31P cMyBP-C mutation—the clinical significance of having the mutation. Acta Veterinarica Scandinavica. 53 .2011
  3. Casamian-Scorrosal D,.Chong SK,.Fonfara S et al. Prevalence and demographics of the MYBPC3-mutaion in Ragdolls and Main Coons in the British Isles. Journal of Small Animal Practice,55,2014
  4. Loder RT., Todhunter RJ., Demographics of hip dysplasia in the Maine Coone cat, J Feline Med Surg., 2017

 

執筆者:服部幸

獣医師
経歴:
北里大学獣医学部卒業
2年半の動物病院勤務
2005年よりSyuSyu CAT Clinic 院長を務める
2006年にアメリカのテキサス州にある猫専門病院 Alamo Feline Health
Centerにて研修プログラム修了
2012年東京猫医療センターを開院する
2014年 JSFM(ねこ医学会)理事
15年間、猫の専門医療に携わる