猫の品種の特性とケア

数年前メディアで猫ブームが起きた時に『猫はお手入れが必要ない』と言われていたこともありますがこれは間違いです。猫もブラッシングや歯磨き、爪切りなどの日頃のお手入れが必要です。ここでは品種の特性とケアに注目してみましょう。

ブラッシング

猫は自分で毛づくろいをするからブラッシングしなくてもいいのか? というとそうではありません。ブラッシングをしないと体に毛玉ができてしまいます。毛玉は常に毛が引っ張られている状態で痛いだけでなく、その下の皮膚が荒れてしまうため作らないようにしてください。またブラッシングは抜け毛をとるだけでなくマッサージ効果もあるため定期的に行ってあげましょう。

どのくらいの頻度?

アビシニアンやベンガルなどの短毛種は週に1~2度で十分ですが、ペルシャ、メインクーン、ラグドール、サイベリアン、バーマンなどの長毛種は毎日のブラッシングが欠かせません。特にペルシャやヒマラヤンは念入りに行ってください。なぜなら彼らは鼻が低く頭が短くて、いわゆる短頭種と呼ばれている品種です。頭が短いということは舌も短いのです。そのため豊富な被毛を自身の小さな舌ではしっかりグルーミングができないため毛がもつれやすく、すぐに毛玉ができてしまいます。ブラッシングは背中側だけでなく腹側も行うようにしてください。特に脇の下や股の部分は毛玉ができやすいため念入りにお願いします。

もう1つの目的

ブラッシングは体表に毛玉を作らないためだけでなくもう1つ目的があります。それは抜け毛の量を減らすことです。実は猫はグルーミングをするたびに抜け毛を飲み込んでいます。飲み込んだ毛は胃のなかで毛球になります。ある程度貯まったところで吐くことができれば、もしくはうんちと一緒に流れ出れば良いのですが、場合によっては大きな毛球が腸に引っ掛かり腸閉塞を起こすこともあります。内視鏡で取り出せればまだ良いのですが、場合によっては開腹手術で摘出しなければならないこともあります。このようなことにならないためにも毎日のブラッシングは欠かせません。

その他のケア

長毛種は月に一回程度シャンプーを行うようにしましょう。シャンプーは抜け毛をとることができるだけでなく、皮膚の健康を保つことができるため定期的に行いましょう。ただし猫は体が濡れることを嫌うことも多く、シャンプーを行うことが難しいこともあります。自宅で行うことが難しい場合にはトリミングサロンなどで相談してください。

スフィンクスやドンスコイなど無毛の品種は保温のための被毛がほとんどないため冬は体温管理が重要です。生活している環境にもよりますが、場合によっては猫用のフリースを着させるなど寒くならないようにしてあげてください。また皮膚が剥き出しのため傷つきやすいことも注意してください。夏場は強い紫外線のため皮膚が傷みやすいので、体を守るためにも薄手の洋服を着させることも検討しましょう。

歯磨き

猫は人間と同じように歯磨きが必要な動物です。歯を磨かないと歯石が溜まるだけでなく歯肉炎や歯周病になってしまいます。場合によっては歯が痛くて食事ができなくなったり抜けてしまったりします。そうならないためにも歯磨きの習慣をつけましょう。

先ほど、ブラッシングのところでも出てきた短頭種ですが、この猫ちゃんたちは短い顎にうまく歯が収まらず歯が斜めに生えてしまいます。つまり歯並びが悪い状態です。歯と歯の間に歯垢がたまりやすく放っておくと歯石になってしまいます短頭種の猫ちゃんは特に念入りに歯磨きをしましょう。

耳のケア

スコティッシュフォールドやアメリカンカールは耳の形が特徴的な品種です。彼らは耳介の軟骨がうまく形成できないためこのような形になってします。実はこの2つの品種は耳介の軟骨だけでなく耳道(耳の穴)を形成する軟骨も変形していることが多く耳道が狭いことがほとんどです。そのため耳垢が溜まり外耳炎になりやすいです。定期的な耳のケアが必要になります。ただし耳のお掃除は安易に綿棒などで掃除するとかえって耳垢を耳の奥に押し込んでしまうことがあります。耳のケアは動物病院やトリミングショップなどに任せた方が安心だと思います。

爪切り

どの猫でも室内で生活するならば爪は切っておいた方が良いでしょう。

爪切りは、

  • 家具や壁紙が傷つくのを防ぐ
  • 爪がカーペットなどに引っかかって剥がれないようにする
  • 一緒に生活する人間が傷つかないようにする

という目的があります。

月に1回程度行うようにしてください。

猫は高齢になると爪が太くなります。爪を切らないとどんどん伸びてしまい肉球に刺さってしまうことがあります。スコティッシュフォールドは若い頃から爪が太くなりやすいため注意が必要です。スコティッシュフォールドは若い頃から爪切りの習慣をつけておきましょう。

猫はお手入れが必要な動物です。特に一部の純血種は特殊な体型や特殊な体型や被毛をしているため念入りにケアをしてあげないといけません。純血種と生活を始める前には、お手入れの時間をとることができるかをよく考えてからにしてください。

 

執筆者:服部幸

獣医師
経歴:
北里大学獣医学部卒業
2年半の動物病院勤務
2005年よりSyuSyu CAT Clinic 院長を務める
2006年にアメリカのテキサス州にある猫専門病院 Alamo Feline Health
Centerにて研修プログラム修了
2012年東京猫医療センターを開院する
2014年 JSFM(ねこ医学会)理事
15年間、猫の専門医療に携わる