猫の品種⑤ペルシャ(ヒマラヤン含む)

ペルシャは大きな丸い頭と離れ気味についた丸い目、短い鼻、太く短い手足と丸みのある体型が特徴です。ボリューム満点の長い毛を持ち、代表的な長毛種で古くからショーキャットとして人気があります。そんなペルシャと暮らす前に知って欲しいポイントを解説します。

品種の由来

ペルシャは紀元前の遺跡に象形文字で記録が残っているほど、最も古いネコのひとつです。現在のイランやアフガニスタンの辺りで暮らしていたとされ、ラクダのキャラバンでヨーロッパへ運ばれ、その時代の権力者や高貴な人々の愛玩動物として大切にされてきました。18世紀にはヨーロッパ各地の上流階級で人気となり、英国で開催された世界初のキャットショーにも出陳されたと言われています。

ペルシャの特徴

ペルシャの魅力はなんといってもその体型にあります。

  • 頭は丸くて幅広でスムーズなドーム形
  • 目は大きくて丸い
  • 鼻は低く上を向いており横から見ると額、鼻、顎がまっすぐに並んでいる
  • 耳は小さく先端に丸みがある
  • 体はしっかりとした骨格と筋肉を持ち、バランスが良く、力強い印象

と言う特徴を持っています。

また、毛は体全体で長く、高密度のアンダーコートを持つためボリュームたっぷりで様々な毛色を持ちます。日本で人気の『チンチラ』は品種の名前ではなく、毛の色を表す言葉です。チンチラとは毛の根元の方に色素が入っていないという数あるペルシャの毛色の1つです。またポインテッド(耳、鼻の周り、手足の末端、尾など体表温度が低い場所の毛がより強く色素が形成される毛色のこと)の毛色を持つペルシャを「ヒマラヤン」として独立した品種として認定している団体もあります。

性格は比較的温和であり、他の品種に比べて遊びや捕食行動、恐怖による攻撃行動が少ないと言われています[1]

ペルシャに多い病気

多発性嚢胞腎

腎臓の中に水の袋(嚢胞)がたくさんできて正常な腎臓の組織を圧迫する病気です。軽度の場合は症状は出ませんが、進行すると腎臓の機能がしだいに低下し、最終的には死にいたる難病です。最近はペルシャだけでなく近縁の品種と言われているスコティッシュフォールドやアメリカンショートヘアーでもこの病気が多く見つかっています[3]。

遺伝性が確認されている病気で、両親のどちらかに、多発性嚢胞腎を引き起こす遺伝子の異常があると子供に50%の確率で遺伝します。この病気は遺伝子検査が可能です。もしペルシャを自宅で交配させようと計画している場合には、必ず遺伝子検査を行い、この病気が子猫に遺伝しないようにしましょう。

多発性嚢胞腎の症状は他の腎臓病と同じです。

代表的なものは

  • 尿量と飲水量が増える
  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 嘔吐

などです。

進行すると昏睡や痙攣、そして死に至る病気です。

残念ながら多発性嚢胞腎を治す治療法はまだ見つかっていません。他の腎臓病と同じような治療を行います。一般的には

  • 腎臓病療法食(リン制限食)
  • リン酸吸着剤
  • 皮下点滴
  • 腎臓保護薬

などを使用します。

多発性嚢胞腎

日常生活で気をつけること

ペルシャは長毛であるだけでなく舌が短いため、猫自身でグルーミングが上手くできずに毛玉になりやすい品種です。毛玉は放置するとどんどん大きくなり毛がつれるため皮膚が痛かったり、毛玉の下の皮膚が炎症を起こしたりします。そうならないためにも頻繁にブラッシングをするようにして下さい。

 

ペルシャの特徴である低い鼻、この鼻が問題になることがあります。涙はまぶたで作られて鼻涙管という管を通って鼻に抜けます。ペルシャは鼻が低いためこの鼻涙管が蛇行しており涙がうまく鼻に流れないことがあります。そうすると行き場を失った涙が目から溢れて涙やけがつきやすくなります。日頃からコットンで拭くなどして常に清潔にしてあげて下さい。

また熱中症にも警戒が必要です。猫は犬と比べて熱中症になりにくい動物ですがそれでも近年の暑さでは流石の猫も心配です。ペルシャは猫の中でも熱中症のリスクが高いと言われています。理由としては、

  • ボリュームたっぷりの被毛
  • 鼻が短いため呼吸による体温放散が少ない
  • 鼻孔(鼻の穴)が狭く息をしにくい

が考えられています。夏場の温度管理はとても重要です。適切にエアコンや除湿機を使用し蒸し暑くなりすぎないように気をつけましょう。

●参考文献

  1. Wilhelmy J,Serpell J, Brown D. et al, Behavioral associations with breed,coat type and eye color in single-breed cats, J Vet Behav 13,80-87 :2016
  2. Young AE, Biller DS, herrgesell EJ et al.Feline polycystic kidney disease is linked to the PKD1 region. Mammalian Genome 16(1),59-65:2005
  3. Sato R, Uchida N, Kawana Y, et al. Epidemiological evaluation of cats associated with feline polycystic kidney disease caused by the feline PKD1 genetic mutation in Japan. J Vet Med Sci .2019 Jul 19;81(7):1006-1011.

 

執筆者:服部幸

獣医師
経歴:
北里大学獣医学部卒業
2年半の動物病院勤務
2005年よりSyuSyu CAT Clinic 院長を務める
2006年にアメリカのテキサス州にある猫専門病院 Alamo Feline Health
Centerにて研修プログラム修了
2012年東京猫医療センターを開院する
2014年 JSFM(ねこ医学会)理事
15年間、猫の専門医療に携わる