猫の品種⑦ブリティッシュショートヘアー

ブリティッシュショートヘアーの魅力は、まんまるの顔に大きな目、筋肉質で丸みのあるボディです。天真爛漫な性格にも癒されます。『不思議の国のアリス』に登場する「チェシャ猫」のモデルとも言われています。そんなブリティッシュショートヘアーと暮らす前に知って欲しいポイントを解説します。

品種の由来

イギリスで最も古い品種のひとつと言われています。2世紀にローマがグレードブリテンを侵攻した際に持ち込まれた猫がルーツとされ、ネズミ退治のワーキングキャットとして古くからイギリスで愛されていました。19世紀に入ってから選択繁殖が始まり、1890年代にイギリスで品種として公認され、アメリカでは1980年になって認められるようになりました。第二次世界大戦中にはペルシャと交配された時期があります。ブルーのソリッドが人気ですが、他の毛色も認可されています。

ブリティッシュショートヘアーの特徴

  • 丸顔で頬は丸々としていてシマリスのように見える
  • 目は大きくて丸く両目の間隔は広め
  • 耳は中位から小さめで根元は幅広で先端は丸みがある
  • 体はがっちりとしていて筋肉質で引き締まっている。力強さがあり丸みがある
  • 被毛は短く毛質は固くまっすぐ。厚みがあり体に対して寝ていないのでビロードのように見える
  • 性格は穏やかで、忠実、愛情深いが、自立心が強い。

ブリティッシュショートヘアーの血液型

猫の血液型は基本的にA型とB型で、A型が多く、B型は少ない傾向があります。(ごくまれにAB型のこともあります)そんな中、ブリティッシュショートヘアーはB型の方がやや多い珍しい品種です。普通に生活をしている分には問題にならないですが、何かの病気や怪我で輸血が必要になると大変です。なぜなら日本で生活している猫は圧倒的にA型が多いため、輸血のドナー猫ちゃんを探すのが大変です。ブリティッシュショートヘアーの場合、健康診断のついでに血液型を検査しておくと良いと思います。

ブリティッシュショートヘアーに多い病気

尿石症(シュウ酸カルシウム)

少し古いデータですが、ミネソタ大学尿石センターに持ち込まれたされた7934個のシュウ酸カルシウム (CaOx) 尿路結石を解析したところ、ブリティッシュショートヘアーに多いことがわかりました。シュウ酸カルシウム結石ができるのは食事の影響だけでなく、水分摂取量や体質、カルシウム代謝の異常など様々な要因が関係していると言われています。同じような尿路結石ではストルバイトが有名です。こちらの結石は食事療法で溶かすことができますが、シュウ酸カルシウムはそうはいきません。外科手術など物理的に摘出することが必要になるため日頃からお水をたくさん飲めるような工夫が必要です。

日常生活で気をつけること

ブリティッシュショートヘアーは他の品種と比べて太りやすい傾向があります。過度の肥満は体によくないだけでなく、寿命にも影響してしまいます。日頃から摂取カロリーに気をつけるだけでなく、適切な運動をさせましょう。

とは言え、猫を太らせないようにするのも難しいものです。まずはその猫に合わせた必要カロリーを知ることから始めましょう。こちらは体重だけでなく年齢や生活スタイル、肥満度によっても変わるため、一概に体重が何kgだから何kcal必要とは言えませんが、動物病院で相談すると教えてもらえると思います。必要カロリーがわかったら、今食べている食事を一日何gあげればよいか確認して下さい。食事の次は運動です。猫も若いうちは遊んでくれますが、成長とともに運動量は減少することが多いです。そんな猫ちゃんに少しでも動いてもらう工夫の1つを紹介します。もしその子が食いしん坊なら成功するかもしれません。ご飯をいつもの食器にざっと入れておくのではなく、少しずつ家のいろんなところに置きます。お腹を空かせた猫ちゃんは家の中のあちこちに置かれたごはんを探しながら(運動しながら)食べることができます。この時は食べすぎないよう、1日の必要な食事量の中で行うようにしてください。

 

●参考文献

  1. Forcada Y.,Guitian J., GibsonG. Frequencies of feline blood types at a referral hospital in the south east of England. J Small Anim Pract. 48,570-573,2007
  2. Mailk R., Griffin DL., White JD.,The prevalence of feline A/B blood type in the Sydney region. Aust Veterinary J.2005
  3. Knottenbelt CM., Addie DD., Day MJ et al. Determination of the prevalence of feline blood types in the UK. J Small Anim Pract. 40(3)115-118.1999
  4. Lekcharoensuk C, Lulich JP, Osborne CA et al Associate between patient-related factors and risk of calcium oxalate and magnesium ammonium phosphate urolithiasis in cats, J Am Vet Med Assoc,217 (4),520-525:2000
  5. Corbee RJ.Obesity in show cats. J Anim Physiol Anim Nutr. (6):1075-80.2014

 

執筆者:服部幸

獣医師
経歴:
北里大学獣医学部卒業
2年半の動物病院勤務
2005年よりSyuSyu CAT Clinic 院長を務める
2006年にアメリカのテキサス州にある猫専門病院 Alamo Feline Health
Centerにて研修プログラム修了
2012年東京猫医療センターを開院する
2014年 JSFM(ねこ医学会)理事
15年間、猫の専門医療に携わる