猫の品種②マンチカン

マンチカンの最大の特徴は短い足と丸みのある顔です。その愛くるしい姿から近年人気が急上昇している品種です。しかし、短い足がゆえに注意しなければならないことがあります。マンチカンと暮らす前に知って欲しいポイントを解説します。

品種の由来

現在のマンチカンは、1983年にアメリカで発見されたブラックベリーという名の野良猫をルーツに持ちます。ブラックベリーが産んだ4頭の子猫のうち2頭が四肢の短いネコでした。そのうちの雄の1頭がブリーダーの手に渡り、アメリカのルイジアナ州で本格的なブリーディングが始まったとされています。

この短い足はDNAの突然変異によるもので、両親ともに短足の場合には母猫の子宮内で胎子がうまく成長できない危険性があります。動物福祉の観点からマンチカンを認可していない猫種団体も多く、現在は既存の純血種以外の猫との異種交配が認められています。

マンチカンが可愛いからと言って、専門的な知識がないまま自宅での安易な繁殖は避けた方がよいでしょう。

マンチカンという名前は映画『オズの魔法使い』に登場する小さな妖精「マンチキン」が由来と言われています。またマンチカンの長毛版であるマンチカンロングヘアーも人気の品種です。

マンチカンの特徴

四肢は短く、前足と後ろ足の長さはほぼ同じです。高い所への跳躍は苦手ですが、明るく元気で陽気な性格で、活発で好奇心旺盛。非常によく遊ぶ猫とも言えます。遊んでいる間には２本足で立ち上がるポーズを見せてくれることもしばしばあります。

マンチカンはその体型から『猫界のダックスフンド』と言われることがあります。そのためか、ダックスフンドに多い病気である椎間板ヘルニアにもなりやすいと言われることがありますが、そのような報告は2021年現在ないようです。背骨の形や柔軟性は他の猫と変わりはなく運動能力や機動性にも障害はありません。

日常生活で気をつけること

高所への跳躍が苦手な猫が多いため、キャットタワーなどは段差の間隔が短いものを用意しましょう。また、ソファーやタンスなど高い所に登るのが好きな猫には間にステップとなるような台を設置してあげると、スムーズに上下運動ができます。

高いところが嫌いならば無理に登らせる必要はありません。その場合運動不足にならないように床などの平面でたくさん遊んであげてください。

マンチカンのお手入れは1日1回のブラッシングでOK。マンチカンロングヘアーの場合は、毎日朝晩の2回のブラッシングとコーミングをしてあげて、毛玉を作らないようにしてください。

マンチカンに多い病気

小人症（軟骨形成不全）

小人症とは、様々な理由により骨格が十分に発達しないまま成長する病気です。ミズーリ大学の研究では、マンチカンの短足はネコB1染色体の変異であり後ろ足よりも前足の短縮化が大きい傾向にあると言われています。両親のどちらか一方から変異遺伝子を受け継ぐと短足化に、両方から受け継ぐと子宮内でうまく成長せず生まれてくることがないと言われています。根本的な治療法はなく、猫も飼い主もこの病気とは付き合いながら暮らしてゆかなければなりません。短足はマンチカンの特徴といえばそうなのですが、遺伝子の異常であることは知っておいてください。

また胸骨が内側に曲がってしまう漏斗胸や脊椎（背骨）が変形する脊椎前弯症の発生率も他の品種と比べて高い傾向があるように思います。小人症を引き起こす遺伝子変異がこちらにも関係しているのかもしれません。

病気とは直接関係がないのですが、マンチカンの特徴である短い四肢が病気の治療に影響を与えてしまうことがあります。動物病院では病気の猫に点滴や抗がん剤など静脈に投与することがあります。一般的な体型の猫の場合、前足や後ろ足の血管に注射したり静脈点滴ができますが、マンチカンの中でも特に足が短い猫の場合、血管にうまく注射できないことがあります。そのような場合他の薬剤に変更せざるを得なく治療の幅が狭まってしまいます。場合によっては治療ができずに命を落とすことが有るかもしれません。マンチカンと暮らす場合これらのことは知っておいてください。